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2010年 03月 04日 木曜日

「今お聞きすると、経営状況、病院の老朽化と狭いこと、またスタッッフの少なさを考えてみても、パルモア病院の危機であると思う。私達は、パルモア病院を潰す気はなく、皆でパルモア病院の存続への知恵を出しているではないか。その意味では、東灘区の他にも選択肢を考えて欲しい。例えば今日分かったことだが、自己所有地ならその場で建て直すことができないのか。皆さんそうされているが、どうでしょう」
と司会役の医師が提案。しかし… パルモア側はこれも難しいと答えた。

さらに、JR西日本との関係について
「前回、たまたまJR西日本の住吉独身寮の建て替えの話があり、借地・テナントイン条件が可能ということで、昨年6月頃から、“本年2月の基本合意に向け交渉中”とあったが、その後どうなっているか」
と質されたが
「話は進展しているが、合意に達していない。理由は、現場ではほぼ合意できても、大きな組織であり、上司への許可等が下りてきていない。基本的合意とは、当該地のパルモア病院事業に、両組織が合意することである」
という答え。

そこで、
「JR西日本のどの部署と話をされているのか。東灘区医師会としてお話したい。現状もお話しして、ご理解を頂きたい」
と願うと、
「我々は、関与していない。会うこともしない」
「せめて、JRのどの部署と話されているのか、教えて下さい」と重ねて聞くと、「それは、JRと相談しなければできない」
と、にべもない。「JR西日本は、東灘区医師会の意向について、パルモア側との合意の条件に入っているのか」との質問にも「入っていない」と回答したところで、先生方の中から
「JRもこの場に来て欲しい」
との声が出た。そこで、私は
「色々なマンション等の問題にも入っています。今回の件は違うことは分かっていますが、神戸市の市民病院もPFIで市民に内容が知らされています。今回は、やはり共同経営のようですので、できればお願いして欲しい」
と発言した。

長い議論だったが、前回も書いたように、東灘区医師会はよく抑えて発言をしているし、私もそうしている。それは、パルモア病院の人々が我々と同じ人柄であり、ご理解くださると信じているからだ。ある大きな産科医院の先生が、
「仮にこんな問題を起こして、もし東灘・灘区の産科で新生児が急変した時、パルモアにお願いしますか?」
と発言した時、皆が「ノー」と答えたのだが、それは、現状のパルモア病院では、町の産科が大きな病院を一軒建てただけで、区民のための安全装置になっていない。そのことを誰もが知っているからだろう。もちろんパルモア側も
「東灘区に来ればどのような連携ができるか、そのために役に立つ設計をしたい。まだ3年も時間はある。皆さんと研究したい」
と力説した。しかし、どこまで信用されているか ── 力説した方は、医師ではないのだ。

個人的に、三宅理事長が嫌いではなかった。淡々として、懸命に語られる言葉に誠意を感じて、いかにも人格者と思っていた。しかし、質疑の中で
「パルモア病院はキリスト教を信じ、経営の指標にされています。私は洗礼を受けたクリスチャンですが、三宅理事長他、誰も洗礼を受けていない。それでキリスト教を看板にしている。そのことについて、三宅理事長はどう思うのか」
と聞かれた時、三宅理事長は当初、
「そうあっても、時代の流れで変わってくる。私は始めから変わらない考え方は、いかがかと思う」
と答えていた。

私は唖然とした。もちろん、考え方がどう違うのか指摘されているわけでもないので、答弁も難しいかも知れない。しかし、自分の病院の利益のみを考えて、苦しんでいる地域に乗り込もうとはしないパルモア病院。創設以来の崇高な理念は、どうなったのか ─ そう聞いているのは明らかだった。三宅理事長も、きっと分かっていると思う。むしろ、誰よりも気にしておられながら、あゝ答弁せざるを得なかったかも知れない。私は、そう信じたい。

30年前、東灘区岡本の笹部桜の公園の隣地がマンションになる問題で、山本という甲南の先輩が、出資する銀行の支店長に
「そんな所に投資する銀行の支店長が甲南の後輩とは、情けない。甲南の平尾八三郎は、文化を育てた」
と一括して公園になった。私はそんな人が好きだ。

ある産科の女医さんは、発言を
「どうか、何とか助け合って、頑張っている所をブルドーザーで荒らすようなことはしないで下さい」
と締めくくられた。医は算術にあらず。計算に走った時、医療は大切なものを失うのである。