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2013年 07月 01日 月曜日

優れた方々が自らの地域を守り、自ら防災計画をつくりだそうとする立派な意欲をかって、共に防災計画を作るべきだと痛感したのは、六甲アイランドの防災を担当し、懸命な努力を重ねておられる、前田 勉氏との出会ったからだ。去る6月21日、六甲アイランドで… 六甲アイランド地域振興会に出席していた、その場でのことだ。私は、氏の言葉の端々に、六甲アイランドの命と財産を守ろうとする気迫を感じた。氏は、「六甲アイランドにある国際大学のS教授とゼミの学生さんは、地域を回り、調整され、素晴らしい報告をされた。最も津波の危険にさらされる国際大学で、地元の防災を研究するのは、実利にかなっている」と感想をもらされた。

確かに、大学が地域貢献をする姿は嬉しいものだ。発表されたその研究の一部はしかし、短い時間なので無理もないかと思ったが、言葉が足りない感じがしたし、多少、私との見解の相違もあった。

例えば、「南海トラフ地震では、他地区から橋を渡って六甲アイランドに押し寄せる」という指摘があった。これについて直接S先生に尋ねると、阪神淡路大震災で、実際そのようだったと仰る。しかし実は、私の知る阪神淡路大震災では、橋は落ちていた。六甲アイランド病院は、通常2,500人の患者を診察していたが、300人しか診察できなかった。都市計画上の欠陥だったのだ。

「助けが無い事が原点」とする無政府状況を設定して論じられている点についても、違和感を覚えた。阪神淡路大震災では、東灘区への救援まで9時間位。今度の東北の大震災も28時間位と思われるならば、最大48時間として、援護を待つと考えてはどうだろうか。「波止場が全部崩壊して、救援物資が来ない」というご指摘も、その通りではあるものの、ならば六甲アイランドの一ヶ所だけでも、非常に強固な波止場を建設し、非常時に備えてはどうだろういか。実は、この件については、すでに私は市に提案しているのだが…。

かつて、阪神淡路大震災の時、私を含む5人の市会議員が東京で、官僚相手に戦った。がれき処理の問題、仮設住宅の問題、アスベスト、食糧、衛生、福祉……多くの問題で、官僚と交渉にあたったそれは、まさに戦い。議員5人で、何回も抱き合って泣いたほどだ。そうした経験の中から、医療産業都市づくりの発想に至ったのだし、神戸空港建設も続行しようと決めて、市長に進言したのだった。

今後、日本における大震災に対応するためにと、5人の議員で「ぎょうせい」から本も上梓した。その本にしたためた検証の中でひっかかったのは、当時の政府が、東北の瓦礫処理を地方都市で受け入れる方向に持って行ったことだ。あの時政府は、「瓦礫は放射能検査をして、地方の都市に任せる」とした。丁度、私が市会議長の頃で、世論では、瓦礫を受けつけない都市はまるで悪者扱いのような言われようになっていた。

私は、広い三つの被災県なら、官僚の能力で、県内処理ができないはずはないと考えた。一方、いかに放射能が無いとしても、受けた地方の風評被害は怖い。ましてや神戸が受ければ、処理場は東灘の魚崎。灰の処分地は、六甲アイランドのすぐそばのフェニックスである。私は、フェニックスを何回も視察しているが、防波堤は低く、時として波が洗っている程。必ずや瀬戸内海の汚染説につながり、六甲アイランドのイメージダウンになると危惧したのである。そして、市長も同じ思いだった。

私は、六甲アイランドには日本一、世界有数の人工島として栄えていって欲しいと願っている。それだけに、すぐに受け入れOKとは言わず、風評被害が出た時の保証、六甲アイランドのイメージダウンの回復を国が保証することを条件とした。私の事務所には、抗議の電話がかかるようになっていた。全国に助けてもらっておきながら、というお叱りが多かったのだが、「放射能は、現地処理が世界の常識」と反論申し上げたのだった。

S先生と私は旧知の仲であり、氏の能力は高く評価している。だからこそ、「市の危機管理室と、よく連絡をとりあって欲しい」とお願いした。すると、S先生が仰るには、危機管理室に電話するなど連絡もしているのだが、県に聞いて欲しいとか、また、ある方からは区役所を通して欲しいと言われた、等といった応対をうけてきたそうだ。なんと、悲しいことか。77億円もの予算をかけて危機管理室を充実拡大したのは私の議長時代のことだが、議会に説明をしたのとはまるで違っているではないか。

何故、S先生のような立派な意欲のある方々と、手をたずさえ、共に防災計画を練り上げようとしないのか。日本中にある同じような海上都市の中で、最も優秀で、全国でもモデルとなるような防災計画を作ろうとしないのか。

幸いにして、六甲アイランドには意欲のある人材が揃っている。防災計画ができれば、行政学上から見ても、高い評価を受ける住民サービスになる。だのに何故危機管理室は、このチャンスを活かそうとしないのだろうか。お願いしたい、頼むから…と、強くそう思ったのだった。