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2020年 03月 27日 金曜日

新型コロナウィルス騒動の中で、よく踏み切られた。100年に1度のことであり… 末永く語り続けられるだろうと思うのは、戸市東灘区上御影の、新調された平野地区のだんじりの、御披露目式。

日曜日、3月22日の朝、当地区としては3代目となる、素晴らしい御披露目が敢行された。この御披露目に御招待を賜り、しかもスピーチの場を与えて頂いたのは、有り難く光栄な事であった。

平成25年、平野地区自治会で、ある区民会議にて新調が決定された。その時の自治会長が、平野地車新調委員会委員長の保元孝彦さんだった。きっと、かなりの覚悟を持って臨まれたと思う。

新調の費用は公表されていないが、予想では1億5千万円に近いのではないか。それだけのお金を、集めねばならない。年度計画を立て、実行委員会を作っての船出だった。

かくて、苦節7年。平野地区は、この日の為に一致団結し頑張り続けた。新調したこの地車は、先代地車を継承した純神戸型の神楽造りで、滋賀県産の樹齢約400年の欅がまるまる使われている。鳥衾や箱棟に使った高級な黒檀とで織りなされるコントラストは、最高峰とも言える。

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その伝統の技は、名高い泉州吉為工務店による。また、鬼板獅子噛みは木下健司さんの技で、その躍動感ある彫刻は題材にも熟慮を重ね、地元にちなんだ説話や後世に語り継ぎたい教訓も多数取り入れられている。

残念な事に、幕は間に合わなかった。それは、新型コロナウィルスの影響で、発注していた中国の工場が止まってしまったから。まさに、時代を反映する事になった。

当日は、先ず地元の由緒ある弓弦羽神社の沢田神主に入魂して頂き、地元の地車として、地元の平安と希望を乗せて出発。地元の自治会館の広場で、晴れて御披露目式となった。

冒頭、保元孝彦実行委員長が病身にも関わらず、「この地車がこれから100年、200年の間地元に生き続け、どうか安全で人々に愛され共に歩んで欲しい」と、万感の思いを込めて語られた。これは、重い言葉だった。

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私は、3番目にスピーチした。昨夜から天気を心配していたが、見事な快晴に恵まれたのを喜んでから、「この地車の新調の重みに、皆さんの願いがこもっています。この地車が、地元の伝統と歴史を作り、継いでいく。さらに、子供たちの教育や地区の防災、地区のコミュニティー作り等に、大きな役割を果たす事になります。皆様、よくやって下さった。この誇り高い日に参加出来たのを光栄に思いますと共に、心からお祝い申し上げます」と申し上げ、あとは、おめでとう、おめでとうと繰り返した。

取りを飾ってスピーチされたのは、地元の平野地車保存会会長であり、人望の厚い和田利重さん。淡々と、「ここまで来るのに、若い人々がよく頑張って下さった。工務店や彫刻師との調整等すべて仕事が終わった後、夜に何回も何回も集まり、ずっと自腹を切ってやって下さった。若い人々は、地元の誇りだ」と語られた。私は、心から拍手した。彼は、影の力、縁の下の力持ちの存在を忘れてはならないと語っておられたのである。

御披露目の開催について、和田利重さんは本当に苦しまれた。十分に注意しながら、会食もやめ、時間を短縮しての英断だった。これから一世紀、地域をまとめ、町を駆けるだんじりに、人々の心はきっと、まとまり続けることだろう。
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