二人は、額に入った写真で市役所に飾られ、残ったりはしない。それどころか、忘れ去られすらもするだろう。その二人とは… 今まで矢田前市長を支えてきた両助役(副市長)の、小柴 善博さんと中村 三郎さんだ。実は昨27日、退任のあいさつに、私達自民党の議員団室へおいで下さり、私と、平野昌司・安達和彦の、ベテラン三議員でお出迎えした。

両氏は、3期12年、我慢と苦労の矢田市長政権を支えてこられたのだが、その間、さぞかし辛かったと思う。なにしろ、笹山市長から市政を受け継いだ時の市の負債総額は、夕張市の次は神戸市と言われたほどで、実に1兆8千億円。それを半分にまで減らし、頑張って市の破たんを防いだだけでなく、政令市中々位の財政安定度をにまで持ってこられたのだ。

市民と市役所の職員には、随分嫌われただろうと思う。仲間の首を切り、売れるものは売った。しかし、市民サービスのレベルを下げるわけには行かない。特に、福祉には気を配らざるを得ないが、そうした中、お二人はまとめ役を果たしてこられたのである。心から、敬意を表し御礼申し上げる。

この二人は、それぞれ違ったタイプ。同じノーを言うにも、小柴さんは、ニコニコ笑って大声で「ノー」。中村さんは、真剣な顔でボソボソと「ノー」と言った ─ 私は、そんな印象を受けている。

私は、小柴さんが好きで、良く相談に行った。彼は公平だったが、議員の立場を良く理解し、出来る事はして下さった。議長当時、偶然、海外の仕事を御一緒する事になった。フランスのマルセイユから、イタリアのテルニ市に行ったのだが、その間の仕事ぶりは見事だった。私も議長の仕事を全うする為に、観光等一切考えなかったし、彼もそうだった。

ローマの空港に着くと、先発していた職員が、赤ら顔で我々を迎え「いいパスタの店を見つけました」と言った時、私も彼も黙って嫌な顔をした。私はその職員に後で、「調子に乗るな。遊ぶのは三宮にしろ」と言った。私も彼も、土産物は朝5時に起きてホテルの近所のスーパーマーケットで買うか、空港で買うのが精一杯。まさに、戦場の戦士のようだった。私を支えて下さった山本次長も同じで、本当に気の毒だった。

小柴さんとは、良く話し合った。イタリアのテルニ市では、私が神戸市の御影バレンタイン広場構想について、テルニ市の市長と交渉するのを、良くサポートして下さった。市レベルの観光の提携を市民レベルにまで繋げ、しかもそのテーマが「愛」であると、ご支援くださったのだ。本当に有難く感じたその気持ちは、帰国後も変わらなかった。

そして、昨日。そんな二人の副市長が、市政の前線から去って行った。目立つ事なく、静かに去る ─ まさに、名助役だった。御苦労様、そしてありがとう。忘れ去られすらもと記したが、長い市政の中で、最も苦しかった時代を明るく支えた二人の助役の役割は、分かる人 ─ 行政のプロには、十分理解され、記憶に残ることだろう。