読書の秋に、この一冊
(09/08 神戸市について)
いずれにしても、とても内容の豊かな本だ ── つくづくそう思ったのは…この度晃洋書房から上梓された、「神戸百年の大計と未来」という、分厚い本だ。

著者のお一人である川島龍一先生からお電話を頂き、喜んで出版記念パーティーに参加した。スピーチの場を頂いたので、事前に御書を拝読し、書評を加えての少ない時間で読み込んだ。人生で、こんなに急いで読んだことはなかったが、決して苦痛ではなく、楽しかった。
四人の共著で、他の御三方は、広原盛明先生と出口俊一先生に、高田富三先生。
広原先生は著名な都市政策の学者であり、阪神淡路大震災まで神戸市の様々な都市政策にご貢献下さり、神戸市から信頼を受けておられたのだが、震災以後の政策の違いから、少し神戸を離れられた。
出口先生は、震災後の長田区の復興についてご貢献くださり、今も現場で発言を続けておられる方で、とてもお元気。
もう一方は、高田富三先生。神戸空港について発信を続けておられ、同書には、神戸空港を民営化する上において多くの問題点があるとのご指がある。
川島先生は勿論、医療産業都市構想について自論を展開されている。
拝読して、4人の先生方が本当に良く調べておられるのに、感服した。更に、広原先生がご挨拶の中で、「決して偏らないように、神戸市の出す資料をもとに書かせて頂いた」と述べられたように、私にも見覚えのある資料も含まれていたが、書かれている内容は、全体としてはやや市行政に批判的だと思ったが、中には同感するくだりもあった。

川島先生は、私をよくご指導下さる。医療産業都市構想について、すべてを反対しているのではなく、医療は社会的共通資本であり、市場原理に委ねてはならない。混合診療をさせてはならないし、日本の宝である国民皆保険制度を守ること。そして、決してその破綻を神戸から始めてはならないと訴えておられる。私はよく理解できたし、同感である。
その基本方針は身についているのだが、具体的な政策での解釈の違いで、私は、他の人々からは医師会の味方だと思われるし、医師会からは反対に思われることが時々ある。確かに、難しい時期もあった。しかし、川島イズムは守ったつもりだし、川島先生の行動に賛成し、三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)が結成された時には、議会の与党会派との意見交換会が行えるよう、微力を捧げた。そんなこともあって、先生を敬愛しているのだが、結果、この三師会は、神戸市の政策策定における大きな発言力を持つに至っていると、私はスピーチで述べた。

高田先生の空港問題では、先生ご指摘のように、市民に事実を知らしめるのは、まさに大切で、同感。スピーチでは、「議会に対して都合のいい数字を見せられることもあり、議員として、注意するようにしなければならないと思っている」とした。
出口先生は、長田区の復興について「計画され過ぎた。しかも、地場産業を忘れていたのではないか」とご指摘。これは、忘れてこそいなかったとしても、確かに復興の重要ポイントにはしていなかったとの思いが、私にもある。長田区民の持つ、コミュニティーの良さと抜群の利便性を破壊したとのご指摘も、大切に心に留め置きたい。長田は最も庶民的な神戸らしいまちで、エネルギーに満ちていたが、美しい箱もののまちづくりで、何かを失ってしまった感があるとのご指摘は、心したいと思った。
広原先生の文章のうまさには、感心した。神戸は、100年で150万都市になった。しかも、天の利の港を基盤にしてつくりあげた大構想の発想は、市会の大先輩、勝田市議の「西は明石から東は尼崎まで、神戸港とする」との100年前の構想から始まっている等、調査され、しかも現在に至るまで、まるで歴史小説のようにイキイキと書かれていた。私は、司馬遼太郎の「菜の花の沖」を読んだ時のように、ウキウキしながら読み入った。楽しかったし、多くを学ぶことができた。そうスピーチして、広原先生に「神戸市に帰って来て下さい」とお願いした。
この神戸開港150年の節目を良い機会として、是非、皆さんにも一読いただきたい。そして、次代に渡す神戸市の、今の一歩一歩を、それぞれのお立場で見つめて、考えてみられるよう、お願い申し上げる。

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