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2015年 09月 15日 火曜日

天上川の猪、殺処分に 神戸市、16日に最終執行予定
「なんとかならないか。生け捕って山に帰すとか…」と、私は思わず、聞き返した。だが… 山に帰しても、また戻ってきて人を襲うと言い返されてしまった ── それは、8月11日のこと。「岡本の、天上川のイノシシを全部駆除することにしました」と、神戸市の産業振興局から連絡を受けたのだ。

「…全部殺すのか」と、言葉に詰まりながら尋ねると、「ハイ。全部で15〜16頭はいると思います」という。

駆除するのは

  1. 人を襲うから。特にビニール袋を持っている方

  2. 河床の工事をする際に、邪魔になるから

  3. 衛生的に悪いから


の三点が大きな理由らしい。

天上川の猪の写真
▲ 天上川の猪親子(資料画像)
川床にいるイノシシが人を襲うのは、確かかと聞くと、「証拠はないが、抜け道があって、その可能性が高い」という。市民の目もあるので、17〜19日の早朝、麻酔銃で眠らせて運び出す予定だと聞かされた。私は、悩んだ。このブログに書けば、反対運動が起こる恐れもあった。

私は、野生動物と人間の共存の姿を見るのが好きで、天上川のイノシシの親子が懸命に生きる姿に日々、励まされてきた。何か救う手だては無いのか…。県のあらゆる部署に電話を入れ、引き取ってくれないかとお願いしたが、ダメだった。
天上川の猪の写真
▲市民に親しまれていた猪たち(資料画像)

最後に行きついたのは、兵庫県森林動物研究センターで、副所長と和やかに話しができた。副所長は、この岡本の天上川の件を知っている様子で、丁寧に説明して下さったが、私は、恐らく神戸市がすでに相談しているのだと推察した。私は、副所長に「人間が、ゴルフ場や宅地開発で野生動物の棲み処をなくし、イノシシが已むを得ず人間界に入ってきて、餌付けをされ、殺されて行く。もともと臆病で人間を恐れていたのが、餌付けで、人間に対しての要求型に変化させてしまった。人間の責任は重い」と言った。

副所長は、「まったくその通りです」と応え、しかし「山に帰しても、食べて行けない」と諭してくださった。

天上川の猪の写真
▲ウリ坊たち(資料画像)
この件では、同意しご協力くださったN氏が忘れられない。早々と電話で「今日(8月12日)、親子で天上川で寝てます。かわいそうや」と仰り、後には「本当に、このイノシシが人を襲ったのか。発信器でもつけて、個体を確定してやりたい」とも言ってくださった。しかし、「今となっては、それは無駄だ」とお断りした。仕方がない、どうしようもない。イノシシが人を襲った結果で、人間が怪我をし、入院さえしておられる。だが、最後までなんとかイノシシを救おうと動いて下さったN氏には、お礼申し上げたい。

神戸市が配布したちらし
岡本周辺で配布されていた、
餌付け禁止を呼びかけたチラシ。
問題の19日を過ぎ、8月20日。その時点で「まだ、半分しか駆除していない」と報告を受けた。担当課長が「半分です。あとの半分が逃げてくれればいいと思って…」と言われたのには、胸を打たれた。

22日には、イノシシへのお詫びとお別れに一人、天上川へ行った。ちょうど、一組の父子が川床を覗き込んで「今日はいない…」と父が子に告げている。聞くと、姫路から見に来られたと仰る。事情を話すと、残念がられた。名刺をお渡しすると、「姫路にはこんな市会議員はいないなぁ…」。自分でもそう思っているが、私はやはり変わった市会議員なのだろう。

9月11日には、「いよいよ16日に処分する」との報を受けた。私は、「ご苦労様」と申し上げた。かくて、天上川のイノシシと市民の長い歴史は、明日、9月16日をもってひとまず、終わりとなる。だが、野生動物と人間との共存や、生物多様性といった大命題は、なくなることなく続く。より良い解決手段はないか、今回の処分を教訓に、考え続けて行かなければと思っている。
天上川の猪の写真
▲市民に親しまれていた天上川の猪たち(資料画像)