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2014年 11月 21日 金曜日

診療所でいつも多忙になさっているのが分かる気がしたのは、「2014年神戸東灘文化協会 月の会」での講演。「耳鼻咽喉科今昔、聴覚、味覚、嗅覚を管理する」と題されたその講演の講師は… 岡野安雅、岡野耳鼻咽喉科医院長。東灘区岡本のシェ・ドンク3階パーティールームは、会員で一杯。他ならぬ岡野先生のことと、前の席に小林啓二さんと陣取り、お話しをうかがった。

短い時間に滋養価の高い話をしようとしておられ、この日の為に、心を込めて話の準備をされたのが、ひしひしと感じられた。誠意が伝わるから、聴衆も真剣。

箇条的に区切って説かれた話は、例えば、香り。嗅覚は脳に近いところから届く重要な感覚で、人間に幸せ感を持たせてくれるそうだ。

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聴覚は、視力より大切かもしれない。ヘレンケラーは五感のうち、「聴覚を失う事を最も恐れる」と語っている。全ての情報が、耳から来る。高齢になると、高い音が聞きにくくなるので、仕事をしていない方には2〜3万円の集音器がお勧め。社会人で、仕事上聞き落としや間違いがあってはならないようなら補聴器をつけるべきで、安くて7〜8万円。高いものでは50〜60万円。違いは見てくれだけだが、できれば大きい方が良い。

その耳の穴には、耳垢。日本人の耳垢はパサパサしているが、欧米人の耳垢は、柔らかい。日本やモンゴルでは耳かきを使うが、欧米人は、掃除しなくても耳の入り口に出て来るので、タオルで拭き取れる。だからだろうか、耳かきの習慣がない。耳なりはよくある現象で、あくまで一般的にだけれど、あまり気にしなくて良い。例えば、エアコンの音や換気扇の音があまり気にならないように、マインドコントロールすればいいのでないか。

70歳を超えると、ゆっくりとよく噛んで食べないと、誤飲をすると命取りになるのが、喉。いびきは上向きに寝るとよく発生するが、止めて上げる方が良い。呼吸が苦しいから、睡眠が浅くなってしまう。横向きに寝る方が、いびきには良い。

よく、味の評論家が「まろやか」だとか「歯ごたえ」がどうのと解説している、味覚。あれは、味ではなく雰囲気を言っている。味は、おいしいとか苦い・辛い・まずいなどであって、もっと正確に表現して欲しいと仰ったそこで、皆が驚いたお話しが飛び出した。

小学校時代、舌の絵があって、舌の先の部分で甘い感覚、先が苦い感覚、真ん中が酸っぱい感覚と習って、テストもあった。皆が覚えている、良く聞く事だが、「あれは大嘘で、味覚は舌全体で感じるのです」。これには、全員が「ヘェー」。考えてみれば、出席者のほとんどが私と同世代なのだ。今までずっと騙されて来たが、笑ってしまうような、ほのかな嘘。時代は変わって行っているのだと感じた話だった。

それにしても、懸命に話される岡野先生。途中で、宇宙飛行士の古川さんの写真を取り出し、「自分と従兄弟で、安井先生と同じ、酒の飲めない下戸ですが、良い男で自分と似ているでしょう」。はにかみながら語る岡野先生が、また好きになったのだった。
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