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2014年 11月 14日 金曜日

私にとって別の意味で忘れていた事を思い出させてくれた、行政視察。それは… 神戸市の、外郭団体に関する特別委員会の委員である議員各位とともに、11月10・11日と訪問した、熊本県荒尾市。認知症の人々を支えるべく、地域包括支援センターという優れた制度を構築し、それが大活躍だと聞き及んだからだ。

熊本県西北端の人口55,381人の荒尾市は、西に有明海を望み、なだらかな丘が続く、のどかな田園の町。調査もさることながら、私にとってそこは、久しぶりに接する日本の原風景。朝日・夕日に星空、トンボやタンポポに、古びた駅舎…と、すべてが美しく、どこか懐かしいような新鮮なようなで、何か嬉しかった。少なくとも、アベノミクスや解散、中国船のサンゴ捕りといった事とは、無関係の世界である。

調査に入ると、荒尾市の担当課長からしっかり説明を伺った。本当によくやっておられる。しかし、私から言わせれば、厚労省が平成24年度から進めている「認知症施策推進5カ年計画」、オレンジプランに代わる安倍首相の国家戦略に乗っていち早く、しかも確実に具体化したものに過ぎないように思えた。

強いて特色をあげるなら、町をあげて、認知症の初期の段階で発見し、早期診断で対応する。それにより、自宅での生活を出来るだけ長くできる。つまり、認知症の進行を出来るだけ遅らせる制度にあるようだ。しかし、この考え方はどこの市でも同じで、神戸市もやっている。

そこで私が、
「現在、日本では462万人の認知症予備群を含め、800万人以上いると思える。65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症又は予備群とある。私は70歳で、その一人。いつも、認知症に対する恐怖心を持っている。かつて神戸市の基礎を築いた宮崎辰史市長は、3人の信頼する友人に『自分がぼけたら、言って欲しい。直ちに市長を辞職する』と頼んでいた。私も、同行委員の橋本 健市議に頼んでいる」
と、笑いを取りつつ、
「自分が初期のそれになっているかどうか相談に行って、テストを受ける機会を持たせるように、どのような対策をされているか」
と聞くと、まったく神戸市と同じで、広報や講演会でPRしているそうだ。神戸御影山手の自治会などはむしろ、専門医を招いて講演会の後、希望者だけ残って、有料とはいえ安くで診断してもらう行事などを実施している。この行事を実施以後、多くの町民が集まるようになり、東灘区医師会長の長坂先生は、その方面で頑張って、市民のためと汗を流して下さっている。ある意味、神戸市の方が進んでいるわけで、少しがっかりした。
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この荒尾市の政策で、認知症の進行を遅らせ得た例がいくつ位あるか聞いてみると、「いくつかはある」と仰る。この辺が実際に数字として出てくれば、生きた政策になるのだが。きっと、実績もかなりあるのだろうと信じてはいるが、結論から言えば、認知症を明確に止めるか、大きく進行を遅らせる薬なり治療法が見つかるまでは、やはり、こういった方法しか無いようだ。

こころの郷専門病院も、拝見した。奇声をあげる高齢者や。出口を探しまわる俳諧高齢者等、いろいろな高齢者が、そこに。見ていて、いつか自分もか…と思うと、いっそ自殺をとすら思えてしまうという、その気持ちも、分かる。荒尾こころの郷病院の職員の皆様は、本当に立派に。手厚く介護・看護しておられる。それだけに、見るほどどこか、悲しくなってしまう。今回はつくづく、高齢者の宿命を感じたのだった。

神戸市の医療産業都市では、アルツハイマー予防薬の開発研究が進んでいる。今回の視察で認知症と再び向き合った今、その成就を、私自身の為にも、人類の為にも、願ってやまない。
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