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2014年 10月 11日 土曜日

京都市(伏見)が2013年に条例を作った時、「しまった」と、思ったのに始まり、今日まで。私は責任を感じながら… 事あるたびに口に出して来た。そんな灘五郷乾杯条例の成立がようやく、ほぼ確定となった。

10日の与党4会派記者発表を新聞などでお読みの方もあると思うが、来たる10月27日の本会議に議員提出議案として提出、可決成立の見通しである。思えば、永い道のりだった。

酒造業界も、私に「日本一の酒所の神戸市はどうなっているのか」と、お尋ねになる。しかし、神戸市自体がワイン工場を持っている上に、ビール会社を北区に誘致している関係もあって、日本酒への理解を得るのが難しい状況が続いていたのだ。

特に、条例に反対しているある有力議員とは、しばしば話し合った。
「安井さん、神戸は日本酒だけではないよ。ワインもあるよ。私の区は、ワインのぶどうを作っている農家の人々がおられる。それらの人々の事も考えて下さい」
と、言うのだ。私は、
「日本一の酒をワインと比べられると、私は地元で説明がつかない。ワインを駄目とは言ってない。しかし、日本酒は歴史もあり、永く神戸を支えた。地場産業を守り、育てるのは、議員としてなすべき事だ」
と、返したが、
「ワインも同じだよ」
と、言う、これの繰り返し。

「じゃあいっそ、両方でやるか」という意見も出たが、それでは日本酒が可哀想。到底、受け入れられるものではない。「それなら、先に日本酒でやって、後からワインでもどうか」…それも、受け入れ難い。ところが、今回の神戸市市長選挙で久元市長が誕生したのをきっかけに、業界のみならず東灘区の人々からも、乾杯条例を制定するようにとの意見が多く聞かれるようになった。

例えば、大の日本酒愛好家で医師の岡野先生は、同じライオンズのメンバーの民主党議員に度々働きかけて下さった。住吉で酒粕を商う小林さんは、私を通じて色々な議員と会食を共にする都度、日本酒の何たるかを解説しながら、乾杯条例を急ぐように進言された。他にも、多くの民間の皆さんが、直接行動に出てくださるようになった。それほどに誰もが、日本における郷土、灘五郷の位置が低下しつつあるという危機感を感じておられたのだ。

市長はどう言っていたかといえば、「議会で決める事」と、にべもない。膠着状態に私も窮していたのが、とある事態が起こって、活路が見えだした。業界からの要望もあり、じわりながら、議会として急激に気運が高まり、ワインへの気配りをしている議員から「ところで、どのあたりで日本酒との折り合いをつけるか」という話が出て来たのだ。

話は、「条例案に思いを盛り込む事」で、まとまった。私も、参加した条例策定の文面には、日本酒の普及を目指すという文は無い。日本酒における文化、伝統を市民が意識して、乾杯をしようとの思いで練りあげられたものだ。

事実、中郷(御影)は680年余りも前の、元弘〜建武の昔に、美酒を朝廷に献上していたという歴史がある。それは、この地域の特殊な地層を通って湧出する、他に類のない伏流水(宮水)のお陰。これと、加古川の舟運で運ばれた酒造好適米の存在が相まって、「くだらない」の語源になるほどの、日本一おいしい酒を産み出してきたのである。

文化面でも、御影公会堂を寄付された白鶴酒造が、世界的な人物、嘉納治五郎先生を生んでいる。酒造会の子供の育成を考えて、灘高や甲陽学院高も設立され、今や、日本の人材育成に不可欠な高等学校の一翼を担っている。さらに、樽作りの技術等から、色々な産業を産み出してきたそれは、今日では日本の伝統芸術へと進歩している。

そうした、多くの意味を覚えながら、「神戸の皆さんは灘の酒を意識し、乾杯して下さい。同時に、私たちの仲間に、ワインやビールで生計を立てておられる市民がいる事も決して忘れず、共に愛好して下さい」という思いで、条例の文面を作ったのだ。

特に、私がこだわったのは、「日本一」への書き換え。ワインへの配慮から始めたものの、「日本有数の酒所」となっていたのが弱すぎると感じ、主張したのだが、御理解を賜った。実は、生一本とも明記して欲しかったのだが、これは反対されて難しかった。

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かくて、灘産だった本案だが、来たる今月27日に可決される見通しとなったが、その前に、21日の常任委員会(産業港湾委員会)を通過せねばならない。この委員会では、私が地元議員かつ長老なので、趣旨説明する事になるかも知れない。もし説明に立ったら、しっかりと上記の事をご説明申し上げ、「決して日本酒の普及だけを狙ったものではなく、ワインもビールもある事を思いつつ、日本一の日本酒処として、日本酒文化を育てて行く」主旨であると、委員諸兄のご理解をお願いするつもりである。

願わくば、すべての議員の賛成を得て、21日も本会議の27日も、満場一致で全ての議員の賛成の中、この灘五郷乾杯条例が誕生しますように。