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2014年 06月 30日 月曜日

どうあっても役人の責任にだけは、けじめをつけて頂きたい ─ 他でもない、滋賀県高島市のダイオキシンごみ問題だ。去る6月28日 土曜日の関西広域連合議会において、私は、心配・不安を与えた神戸市民とりわけ六甲アイランドの人々に対し、お詫びの言葉が無い事について悲しみと失望を感じるとして、嘉田知事に対する質問で… 切り込んだ。

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滋賀県の高島市が、7年間に渡って基準を超す17倍ものダイオキシンを私達、東灘区六甲アイランド南1.5㎞にある埋立て地フェニックスに産業廃棄物として投棄していたというこの件では、滋賀県知事の嘉田由紀子氏に、法的にも廃棄物処理法条4条2項、廃棄物処理法9条の3第10項により監督指導義務があるにも拘らず、その不法行為を見逃し、発見できなかったのだ。

本当は「悲しみと怒り」としようかとも思ったが、行政がしでかした、これ程のこと。嘉田知事の行政手腕云々と言うよりも、環境先進県と豪語してきた、関西広域連合環境担当県知事としては、と、怒りよりさらにきつい意味を持つ「失望した」という言葉にしたのだった。

続いて、何故、先にフェニックスに発表させたか ─ つまり、滋賀県も騙されたと被害者ぶりたかったのか、とも質した。

これに対し、嘉田由紀子知事は本会議場の演壇に立って
「只々、今回の件は私の責任であり、申し訳ありません。神戸市民の皆様、とりわけ六甲アイランドの方々、そして近隣の芦屋市、尼崎市の皆様、更に大阪湾の方々、また漁業者の皆様に心からお詫びを申し上げます。更に今後は二度とこのような事が起こらない様、原因を追究し、改善をして参ります。また高島市にも早速指導に入り、高島市の中に外部委員会を設け、原因追究と真相を調査させる事といたしました」
と、私の顔を見つめながら答弁された。
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私は、当然の答弁と受け止めながらも、知事のひた向きさに少し打たれるところがあった。だが、そこは怯まず騙されず、
「それにしては、国の会計検査院、本来なら滋賀県が見つけねばならない事を国が発見した。その日が、4月17日~18日。しかもその時滋賀県の職員が立ち会っていた。その時点で滋賀県は知っていたのである。そして真実をフェニックスに通告したのが、5月2日。更にフェニックスから神戸市に連絡があったのが5月21日、そして記者発表が6月11日。
何と滋賀県が知ってから、56日間。一体何があったのか、疑惑の56日間である。悪いようにとれば、揉み消そうとしていたのではないか。
このような件は民間でおきたら、逮捕され、会社は潰される。しかし、行政性善説で、役人同志が傷を舐め合って守りあっている。これは、行政が行政を騙すという不正行為を行っているということ。その点について、どう思っているのか」
と質した。嘉田由紀子知事は、
「誠に申し訳なく、安井議員のおっしゃる通りで、慙愧に堪えないものです。私の方に連絡が入ったのは6月の初旬の2日でした」
と答えた。

私は、思わず絶句した。それが本当なら大変である。4月17日・18日に発覚したこんな不正行為を、知事に6月2日まで報告していない ─ まさに、確信犯を犯した上に、上司である知事への連絡もしていないというのだ。一体、現場では何をしていたのか。気の毒に、この知事も被害者かも知れない。知事の無念さが伝わって来た。

私は、これで質問の方向を変えた。私は
「神戸市長に、滋賀県と高島市を告訴するように進言しようとしていたが、そこで知事はどのように責任を果たそうとしているのか。処分についてもまた、本来ならば知事が高島市を告発せねばならない立場なのではないか」
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と言ってしまった。これに対し知事は
「処分についても厳正に行うとともに、告訴も含めて考えていきます。そして、私の責任の取り方も考慮に入れております」
と真摯に答弁された。

私はこれで、質疑を再び変えた。私の中では、嘉田知事の潔さに、同情が込み上げて来ていた。この人は、被害者なのだ。信頼する部下に、引退を間近にして裏切られている。しかし、それを言っても言い訳に過ぎない ─ その無念さが、ひしひしと伝わって来た。そんな事がかつて、私にもあった。だからと言って、真実を隠したり、処分を甘くしてはならない。しかし、嘉田由紀子知事は、自分の信念と誇りであった環境問題で、部下に最後に裏切られた。それでもなお「それもこれも、自分が悪い。自分の責任である」と、自分に言い聞かせているのだろう。

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私は
「これ以上は、もういい。後は約束を守って下さい」
と、質問を大阪府の松井知事と京都府の山田知事に、それぞれの分野について質した。

私に与えられた発言時間は8分で、最後の1秒まで真剣だった。後で聞くと、議場は張りつめていたと言う。

全てが終わり、仲間の議員と談笑しながら議長の出口に行くと、後から「安井先生!」と声が掛った。振り返ると、滋賀県の嘉田由紀子知事が
「安井先生、本当にすみませんでした。地域の方々に、くれぐれも私がお詫びしていたとお伝え下さい」
と、深々と頭を下げておられた。私は思わず、「私も、厳しい事を申し上げてごめんなさい」と…言って抱きしめようとしたが、止めた。

彼女は、立派な知事であられた。これからどうされるのか分からないが、心から、今後のご活躍…或いは、淡々と充実した日々を送られるのかも知れないが、そうした日々をと、心から願った。嘉田由紀子知事の最後の議場で、私が嫌な思いをさせてしまった。しかしこれも、私の議員としての、神戸市民を守る立場の一コマだ。気持ちは十分伝わったので、嘉田知事には、黙って神戸の六甲アイランドに来て、皆と話して欲しいとも思った。

今、私に、一通のファクスが届いている。高島市の女性市会議員からで「この度は、私達のゴミが神戸に大変迷惑をお掛けしました。今後このような事のないよう、ゴミの量を減らし反省を致します」と記されていた。もし時間があれば、ふらっと高島市を訪れてみたい …… 今は、そう思う。