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2011年 02月 02日 水曜日

昨年同様、今年も「昌冨すし」さんは、一家挙げて待って下さっていた。福井食道楽… 一昨日の、福井に向かうサンダーバード車中でのサッカー談義の続き。

人の良い女将さんが、笑顔でお出迎え。「今年は大雪で電車が1時間半も遅れ、大変でしたね」と、既に情報が入っていた。ご主人も気合いが入っていて、「さぁ、勝負」といった感じ。すぐにのれんを入れて「絶対に客は入れない」と宣言。食通のKさんが「いい客は、入れたら良ろしおますがな」と言うと「いやいや、今日は入れません」。粋な啖呵をお切りになる。

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▲ 灘泉古酒十年古酒
Kさん・Sさん・Tさん・ボランティアの足立さんと、カウンターに座る。Kさんは、あらかじめ昌冨すしさんに、わざわざ蔵元に行って仕入れた灘泉の古酒十年、菊正宗「嘉宝」一年、「嘉宝」十年古酒、大賞月桂冠十年古酒など、前もって送っておかれた銘酒・古酒の封を次々と切っては、嘗めるように味わいながら日本酒を楽しまれる。

先ず、寒ブリの分厚い刺身に本わさびを包んで食べる。トロより遥かにうまい。

私の隣のTさんは、社員数2万5000人の一部上場企業の元副社長。海外部門を指揮した猛者だが、決して威張らず、謙虚で穏やか。社員からも敬愛されておいでで、私が何度生まれ変わってもこの人格にはなれないと思っている。そのTさんが、菊正宗嘉宝10年ものを呑むなり「奥行きがある」と一言。彼が焼酎好きなのは知っているが、そんな素振りは出さず、日本酒で通す気配りに、頭が下がる。本当に、その日本酒が気に入ったのだ。

続いての料理は、うなぎ。あぶって海苔で巻き、わさびで食べる。これまたうまい。福井でしか取れない「ガサエビ」も出た。かつては一山なんぼで安物扱いだったが、甘エビよりうまい事が分かって以来、珍味になっている。なるほど、甘エビより良いほどだ。

これらの料理に合わせて、食通のKさんが持参の盃を出される。その盃は、ある著名な方が「キスの味がする」と称した、青磁の輪花盃の逸品。灘泉・菊正宗嘉宝 1年・10年…そして、大賞月桂冠はぬる燗で、それぞれの味を楽しんだ。足立さんがグイグイやって「あぁ、美味しい」。この人こそ、本当の酒飲みなんだろうなぁ…。

この店にしかないという、昨年も楽しんだ、カニ味噌をシャーベット状で供する一品も。中にカニの身を混ぜて食べ、さらに残った器にご飯を入れて、三度味わう。続いて、寒ブリの内臓を炙ってはしゃぶり、楽しんではむしゃぶる。酒は、40℃の燗酒で楽しむ。一本の酒が冷・常温・燗で変わるのはもとより、盃でもすべて味が違うそうだ。酒を呑める人が羨ましい程楽しんでおられるのを脇目に、私は横でお茶を…悔しい。

ふと見ると、年の頃なら30を少し越えた上品な綺麗な女性が。聞けば、このお店の娘さんとか。未婚らしいと伺って、海上自衛隊をお世話しようと思った。考えれば、わずか5人のために一家3人で、心からの歓迎をして下さっている ─ 本当に、贅沢。その娘さんが玄関を開け、降りしきる雪景色を見せようとする。雪かきで集めた雪を載せたトラックを指差して「見て見て」と誘う。雪国の風物詩を見て欲しいのだろう。いじらしいような気配りに囲まれて、楽しい一時が過ぎた。

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▲ 雪の福井で
Sさんと次の計画を立てる。Sさんは本当にカッコイイ。仕事が良くできる、私の憧れの遊び人で、粋な男。例えば、彼とクラブに行くと、1時間が10分の感じがする程楽しい。クラブの女性は、Sオアシスと言って席に着きたがる。爽やかで自慢や威張りがなく、この男と居ると楽しい。だからといって、遊んでいるのではなく、しっかりと接待をして、仕事も元気でやっている。「良い店でしたね」との評に続いて、「ただ、JR西日本は根性がない。雪ぐらい蹴飛ばして、飛ばしたら良いのに」と普通電車に何回も抜かれるサンダーバード特急に乗りながら笑いを取る気配りが、憎い。

JR西日本がネタなのは、アナウンスが不親切だったから。京都から大阪以遠なら新快速に乗り換えた方が早いとか、大阪へのおよその到着時間をアナウンスするといった気配りがなかった。「車輌の底に雪が付いている」と、いたずらに不安を煽るだけだったのは、まるで要らないアナウンスでの失敗を恐れて、逃げ惑う役人そのもの。3時間以上遅れれば特急券は払い戻されると思うのだが、その案内もない。

食通のKさんは「それもこれも含めて、今回の旅行に同行して下さったSさんやTさんに、かえって悪かった」とこぼす。こんなKさんの心がいじらしい。Kさんありがとう。福井から6時間かかった帰路だったが、あと1〜2便遅れていれば車中泊で、次の日には、全面運休。それだけ、我々は運がよかったのだ。