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2011年 01月 05日 水曜日

お正月から『ほんまもん』に会えた、というのは、料理の話。東灘区は御影の、とある著名な和食中心の割烹料理を訪ねたのは… 2日。目一杯の寝坊の後、15時から、食通のKさんに誘われて、ボランティアの足立さんと共々、連れて行ってもらったのだ。私もKさんも神戸一美味しいと思ってはいても、人には内緒。むろん、流行りすぎると困るから。到着は15時30分。「今日はお任せで」と言うKさんに、主も「よしきた」と気合いが入った様子。粋なもんである。

前菜が出てくると、すかさずKさんがそれにあった古酒を指名。「今日の酒の燗がいい」と褒める。大将が乗ってきて、刺身がうまい。色合いもサーモン・サバ・白身のヒラメ・ウニにわさびを巻く。菊正宗の正月用限定酒が、出しゃばらずに引き立てる。酢の物はワタリガニの身を取った上に、赤いかに味噌を乗せて三杯酢のあんかけ。煮物は、野菜中心に、本来の味が生きている薄味。酒によって猪口を選びながら呑むKさんを脇目に、下戸の私はひたすら、食べる。男性店員が、イケメンでカッコイイ。

最高級に近い月桂冠の34年物の古酒を注文したKさんに、そのイケメン君、うっかり「燗はどれぐらいにしますか?」と聞く。「どの酒はどのくらいの温度が良いか、研究しておきなさい。自分で味わって勉強しないといけない。もったいないと思うな」と、たしなめるKさん。思わず「ハハー」と引き下がるイケメン君。そんなやりとりを脇に、料理する大将にますます気合いが入る。味、雰囲気の良さ、そして誠実で名人に近い腕を披露されて、存分に楽しんだ。Kさんも足立さんも、大満足。Kさんがまず店員の二人に『お年玉』を。大将には『大入袋』。大将が、それを店に貼る。

大将とKさんは、いつもケンカ口調。例えば「これから、子どもを入れるな。子どもを入れるのは一流でないよ」とKさんが言う。「この店のやり方は、俺が決める。気に入らなければ、来なくていい」とまで、大将。「意地のない高い店に誰が来るかい」と返すKさん。丁々発止が、実に楽しい。

私が「この味が分かるのかな?」と聞く。大将が「どこまで分かって下さるか…」と嘆く。原因は何だろうと、私とKさん、大将の3人で論議に。私は「マスコミの嘘報道で、何でもうまいと言うのが、味音痴にした」。大将は「コンビニが、味を一定にしてしまった。何でもトレハロース…」と嘆く。Kさんはぼそりと、「時代ですなぁ」。

いつも満員なのに、今日は正月から客が来ないなぁと思いきや、なんと大将が3人貸切にして打ち込んで下さったのだった。実は口うるさい客を敬遠して、開店前に入れて下さったのだった。感謝。「この味を、息子に伝えておいて下さい」というKさんに、「料理はセンスと意地だから、息子は息子の味を作るべきだ」と、大将。そんな味と会話を楽しむ、私。それでも、1時間半程でサッと切り上げた。「大将、本当に美味しかったよ」。3人にとっては、至高のお正月だった。

帰りの車中、「大将はKさんが好きなんだよ」と言うと、「私も大将が好きです」とKさん。曰く、大将はミシュランの調査を断ったそうな。「どこそこが三ツ星だって」と聞いても、「あ、そう」で終わる、そんな大将、ヒマを見つけては、一人で、あらゆる店の味を研究しているそうだ。ほんまもんは、そんな努力あればこそ、なのだった。