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2010年 04月 21日 水曜日

区役所の職員が引きこもりの青年と何度か接触してくれていることは、前にも書いた。信頼関係を築き、医師の診察をと説得くれたおかげで、何とかなりそうな気配がしてきた今日、午前10時。私は… 外で待機。青年の父親と区職員が部屋に入り、A君に優しく話しかけた。
父親が「Aよ、一生こんな生活をするのか。病院で一度見てもらおうよ」と話しかけ、区職員が
「私と一緒に行こうよ。さぁ立って、私と行こうよ。この前行くと言ってくれたから、みんなで来てるんよ。一緒に行こうよ。嫌かも知れないけど、私は行った方が良いと思うよ。嫌? そう言わずに行こうよ。ちょっと、毛布から顔を見せてよ。そのままやとしんどいやろ。行かへん? そんな事言わんと、行こうよ。B先生ご存知でしょ? ちょっと行こうよ」
と、優しく心のこもった説得を続けること、約50分。

外で待っている私にも、会話が聞こえてくる…
「この前行くと言ってくれたじゃない。お願いだから、お父さんの車で行こうよ。その毛布のままで良いから行こうよ。咳も出てるし、先生に見てもらおうよ」
と、区職員は説得を続けてくれていた。私は、涙が出てきた。必死の区職員の努力。父親や祖母の苦しみ。本人もさぞや、苦しいのだろう。

1時間半を越えた頃、区職員は優しく
「A君、ごめんやけど、一緒に行くから」
の声と共に、物音が聞こえてきた。外からは分からなかったが、きっと身体に手を触れ、強引に引っ張りだす作業に入ったのだろう。父親の会社の職員さんに助けを求められ、私も入って、青年を引っ張りだした。

私はそこで、A君との初めて対面したが、まるで某宗教の教祖のよう。顔中から毛がボウボウ。ランニングシャツで、臭いがキツイ。必死にベッドにしがみつくやせ細った彼の手を私と区職員で外し、秘書と4人がかりで、何とか部屋から運び出した。

その間、区職員は
「ごめんな。これもA君のためなんだよ」
と語り続けていた。区職員もきっと泣いているのだろう、声が変わっている。


▲一路西へ
私も思わず
「みんなA君が好きでやっているんだよ。頑張ってみんなで行こうよ」
と言葉が出た。お父さんの車に乗って、区職員がA君のそばに乗り、父親が前に座って出発。私は後を追い、一路西へ。病院に着くと、職員の素早い手続きで入院。区職員がこんなにやってくれていることに、心から「ありがとう、ありがとう」と感謝したのだった。