この背景には、長らく市営住宅に入居していない人々の税金を投入してきた一方で、ずっと住み続ける人が増えていることがある。市営住宅はあくまでも福祉施設であり、一時的に住宅に困窮している方や、経済的に困窮している方、新婚の方に使って頂き、余力がつけば他に移ってもらうための、いわば仮住まい的な位置づけなのだが、年々市営住宅が増え続け、神戸市では、住宅総数の内市営住宅が占める割合が、とうとう8%と、政令指定都市の中でトップになってしまった。だから自ずと、これ以上一般税金を投入し続けるのはどうかという議論に至ったのである。
市営住宅の使用期間は一応70年となっている。しかし、古い住宅を維持していくのには大変な費用がかかる。そこで、昭和45年以前に建てられた7161戸の内、改善歴がある住宅を除いて、廃止または建て替える。昭和46年〜50年に建てられた9251戸については、100%耐震対応化し、エレベーターを設置するなどの改善を進める。が、この中でも団地ごとに廃止または建て替えを判断し、前述の二つの大目標に向かうことになったのだ。
▲当局に質問をぶつけた
「ながい議員生活の中で一貫して市営住宅の削減を訴えてきたが、やっと実現してきたので、評価する。しかし、市営住宅はあくまで福祉政策の一つだったのが、民間と同じ住宅政策に変わってきた。その分岐点は、市営住宅の中に駐車場を造って、自家用車を持ち込み可にしたことにあった。民間に近づけるのは良いが、本当に住宅に困っている貧困層や、これから出発しようとする新婚者の応援はもっと大事で、また、一時的な救済処置としての役割の点でも不安であるが、今後どうするのか」と質した。当局は
「低所得者に対する住宅セーフティーネットを強化して、その分野は残していき、足らない分については、それらの人々に対する民間補助を考えている」と答弁。「それでよし」と心の中で思った。私の事務所には、本当に住宅に困っている多くの人々が、市営住宅に入りたいと相談に来られる。当局は、「何年間と無料で借りてもらって、力をつけて欲しい」と、その分野は残していくとしている。
現在の入居者の方々には、今後、団地によっては移転をお願いするケースが出て来る。民間賃貸で市営住宅の役割をしている民間借り上げ住宅も、市との約束期限の20年に来ていて、間もなく返還のピークを迎える。居住されている109団地・3805戸の人々に立ち退きの交渉せねばならない。
「それらの仕事は、民間にしてもらう方が費用や手間が安く上がるのでは」と質したところ、
「今のところは、市の職員でやる」という。
「これには賛成しかねる」と反論し
「この議論については、さらに進める」と、申し渡した。
耐震化やエレベーター設置、建て替え、住宅廃止などの費用は、大体700億円くらいかかるのではないかと思うが、無論、こうした費用についても検討の余地があると思っている。