▲病を持つようには見えないが…
しかし、私は医師ではない。もし私の言葉が自殺につながるかも知れないと思うと、夜も心配で、電話が鳴る度にビクッとするほど、恐い。医師にかかるようお勧めするのだが、それでは物足りず、もっと何かを求められるので、私も困る。区役所に連絡すると、これまたお役所仕事で「医師にいきなさい」と言うばかり。そんなことなら私がとっくに何度となく言っているのだが、こんなことの繰り返しが続くのだ。
中には、部屋に閉じこもって毛布にくるまり、何も喋らない方もおられる。以前は良い青年だったが、何がどうしたのやら、家族の方も困っておられる。何回か入院経験がおありで、今は、絶対に医院に行こうとしない。時々、家族の方の要請を受けて、秘書と一緒に壊された鍵を直しに行ったり、家族の方の相談に乗ったりするが、本人は一言も話さない。ヘッドホンで音楽を聴いていても、私の姿を見ると、頭から毛布にくるまってしまう。
区役所に相談すると、例によって「医師の所へ。または、前に入院していた病院に相談して下さい」。私もさすがに愛想が尽きて医師会に相談したら、なかなか上手くいかないものの、往診していただける先生を探してくださることになった。
そんな折、新しく区役所に赴任してきた方がご挨拶に来られたので事情を説明すると「役に立つかどうか、結果は期待しないでください。私が行って、その方に医院に行くよう話してみましょう」と言ってくれた。早速、彼はそのお宅に行って、頑張ってくれた。が、やはり毛布にくるまって話ができなかったそうだ。
しかし、その職員は「粘り強くアタックして、医院に行って下さるよう、まずは信頼関係を作りたいと思います。が、あまり期待はせずにいて下さい」と、実に謙虚に言われた。私は思わず「ありがとう」と謝意を口にしていた。とかく役人は”汗をかかない”・”責任を取らない”・”言い訳のうまい”人が多い。そんな中、やる気のある人が赴任して下さって、良かった。結果はどうあれ、その心意気こそ、市民の大きな信頼につながって行くのだろうから。どうか燃え尽きず、その情熱を持ち続けて欲しいと願っている。