例えば、私の家のガレージに吹き付けの石綿らしきものが出てるのが心配でアスベスト調査診断をお願いすると、最高限度額で25万円が補助される。あるアスベスト調査診断士に聞いてみたところ、25万円以内で十分調査できるようなので、心配する市民にとって有効な手段である。さらに調べると、除去することになった場合、その除去費用として工事費の三分の一以内で、限度額300万円を補助することにもなっていた。これは、市民にとって有り難い良い制度である。が、問題は、こんなに良い制度があまり利用されていないこと。
私が調査したところ…
アスベスト補助実績 件数
年度 | 平成18年 | 平成19年 | 平成20年 | 平成21年 |
---|---|---|---|---|
調査 | 5 | 2 | 3 | 33 |
工事 | 5 | 4 | 5 | 4 |
といった具合である。調査や工事はこんなに少ないものだろうか。何が原因なのか。「市がこんな良いことをしてくれているのに」と思うが、何人かの調査士に聞いてみると、どうやら手続きが大変らしい。建築当時の図面の提出を求められたり、プライバシーに関わる書類が必要といった問題があるようなのだ。神戸市の方からも「こんな制度があります」と調査士に情報を流してもらい、或いは市民からの相談を受け付けるなど、もっと市民に伝わるように努力して欲しい。実際「手続きも助けて下さい」など頼まれて、大変だとか、工事に至っては、もっと大変なことになっているとも。
そこで、市当局に「もっと手続きを簡素化して、市民に広く定着させるべきだ」と主張したところ、市当局も同じような苦情を聞いているようで、困っているという。何しろ国のお金で、国の指導による事業なので、なかなか市が独自でやることが難しいらしい。それでも「できるだけ簡素化しました」と見本を見せてもらった。一応、これまでよりかなり簡素化されてはいた。
このようなケースは良くあることで、良い制度を作っても利用しにくい、されにくいのでは、いかにも「やっている・やらされている」施策になり、市民に定着しにくい。今後十分に気をつけた上で、まだまだ足りない市民へのPRにも努めて欲しい。もっとも、市のほうも国が絡んでいるという気の毒な面がある。地方分権に伴う予算の配分は、地方に重点を置く必要があると良く分かる、その好例である。