▲すてきな笑顔でお出迎えいただいた
▲この屋敷をお守り下さっている
▲品々の一つ一つに物語がある
「この椅子はアメリカ時代に使っていたものです」
「このテーブルクロスは私の母が龍村の帯を作り直したものです」
と、ニコニコしてお話し下さった。
彼女のご主人のお父上が、神戸高商から神戸の鈴木商店に入社し、アメリカ担当になった。その時にアメリカ人に設計させたのが、このお宅。当時の家具をこの家に持ち帰られ、今でも、それらを使っておられる。
▲楽しい語り口に、笑いが絶えない
ふと、思い出したのが、岡本の屋敷。かつて、谷崎潤一郎が最も愛した岡本の和洋折衷の屋敷で、関西の文化人が集まった。その屋敷を守るべきだと感じて、持ち主の文屋さんに「神戸市の文化遺産の指定を受けて欲しい」とお願いしたことがあった。そのとき、文屋さんはきっぱりと「役所の保護を受けなくても、この家は守ります。この家を守るのが、私の仕事です」と仰って、現に、カナダ人に貸しても釘一本打たさなかった。借りたカナダ人も心得て大切に使って下さっていたが、震災で消滅した。
当時、私は議員2期生。もっと強くお願いしていたら、或いは復興できていたかも知れないと思うと残念であり、私にも責任があると思っている。しかし、あの時の私の若さでは、あの文屋さんの、気品に満ち毅然としたお断りの弁を押し切る事は出来なかった。
冨永喜代子さんは、国の登録有形文化財指定を受けて下さっている。彼女も初めは断ったそうだが、皆さんの為にと受けて下さった。彼女は、自分を“ドケチ”だとおっしゃる。色々な物を捨てずに、上手に再利用しては楽しんでおられるからだが、私の後援会の幹事長がドケチ教の教祖の吉本清彦さんで
「ドケチとシブチンは違う。ドケチはうまくお金と物を使うが、シブチンは出す時に出さずに逃げる。しかし、ドケチをやるには修行がいって、なによりユーモアがなくてはならない」
と言うのですよとお話しすると、「そうそう、ソレソレ」と笑われた。
▲お花に囲まれて
庭のきれいな花に囲まれてのお話をうかがって、実に楽しかった。この美しい方が、まだ89歳。まさに日本女性の美しさ。賢く、品があって、奥深く人々から信頼される。
「安井さん、私、これからお隣の奥様と芦屋大丸で、コーヒータイムよ。貴方はダメよ。またお会いしましょう」
という今日のお話の幕引きに「ハイハイ」と応じ、「いつまでもお元気で居て下さい」と願いながらお宅を後にした。
Yasui が 15:37:00に分類 気になる紳士・淑女録 で書きました。