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2023年 03月 07日 火曜日

条例は、健全に効力を発揮していたのだろうかと、とても気がかりだったのは… 乳児が亡くなってしまった事件から。

こども家庭局の中山さつき局長から、電話で緊急の報告が入ったのは、2月28日早朝。垂水区で昨年10月6日に、生後三ヶ月の乳児が自宅で死亡した事件があり、警察がその傷害の疑いの捜査に入ったとのことだった。

母親は、妊娠中の令和3年10月にはすでに、垂水区役所に「出産や育児に不安がある」と電話で相談されていて、区も家庭訪問などで支援していたそうだ。4年6月の出産後も色々と相談に乗っていたのだが、結果として、乳児は亡くなってしまった。中山局長は「警察の捜査を待たないと、虐待かどうかは分かりませんが…」と無念そうだった。

その後はメディアを通じてしか様子が分からなかったので別途お願いし、3月3日、状況の報告をうかがった。

私の頭の中には、平成31年4月から施行されている【神戸市こどもを虐待から守る条例】があった。議員提案で作って頂いたその提案者として、私の小さな誇りとなっている条例だ。実際に施行以降、虐待についての相談は増えているが、重大な虐待と認定されるほどの事案は無かっただけに、条例の効力が発揮されていると信じていたのだ。

そこで、今回の件は条例に反していないか、もしそうならどのような改善が必要なのかといった点について、説明をお願いした。

説明に来られた家庭支援課の水野課長は、条例の内容もよく理解されていて、丁寧に私の疑念に応えて下さった。実は、条例が施行されてすぐ虐待事件があったのだが、当局はその内容も、それに伴う準備もできていない状態だったので、条例に反しているというには至らなかったのだ。今回聞かせて頂いた段階では、それぞれよくやって下さったと思えた。

報道によると、この家庭は、先に三歳の長女が生まれてすぐにネグレクトと確認され、現在は施設でくらしていて、育児困難家庭としてフォローされていた。

問題は、昨年の9月、まず8日に区の保健師が。16日には、児童相談所職員3人と区職員が。さらに27日には病院が、乳児の次女と母親の容体を確認しながらも「異常なし」と判断した点だ。

私が気にしているのは、母親がSOSを市に発信してからの市側の対応だ。条例の「市の責務」の第5条の4と5で、市は虐待を防止するため、「関係機関等がこども及び保護者への適切な支援が行なえるよう、関係機関等の取組を支援するよう努めなければならない」とあるため、実際にどのような支援をし、関係者に通知したのかを確認したかったのだ。

これについて、市はかなりの事をしていて、その母親の家族の方々へも配慮しているし、いつでも対応できるように児童相談所も動いていた。ただ残念なことに、その段階でネグレクトや虐待の確認ができなければ、見守って、母親との連絡を絶やさないようにするくらいしかできなかったと思われる。虐待の確証に至る根拠が見つかっていれば、周囲ももっと強く働きかける事が出来ただろうに。

幼子の命が失われてしまった今になっても、警察の捜査の結果を待たないと、虐待と言い切れるか分からない状況のようだ。
 
水野課長が「いずれにしろ子供が死亡した以上、私たちになにか他にできる事は無かったのか、警察に協力しながら、時をおいて追究したいと思います」と語ってくれたことに、少し安堵した。条例は、健全に効力を発揮していると思えたからだ。このような悲しい事件が繰り返し起こらぬよう、今後とも当局の一層の努力を期待したい。