Skip to main content.

2023年 01月 16日 月曜日

私は引退までに、現在気になっている仕事や気になる事案について、完遂させることが出来なくても、せめてその発起人となり… 少しでも見通しをつけていきたいと思っている。

議員生活をしていると、「何が楽しみですか?」とよく聞かれる。もちろん、本来の仕事である行政のチェックや政策提案がうまく行き、市民の役に立ったと感じる、その手応えがあった時が一番で、一人でにんまりと微笑む。他に、『いい人』『ほんまもんの人』に出会う事も。その人を思い出すだけで、楽しくなるような人の事だ。そう頻繁にあることではないが、私の周囲には何人もいらっしゃる。

その中の、お一人。御影にお住まいの馬場喜美世さんのことを、書きたいと思う。

馬場さんと私とは、もう20年以上のお付き合いになる。実に素敵な女性で、私の市政報告にも後援会旅行にも母娘で来て下さった。時に厳しいご指摘も受けるが、常に地域を思う、社会正義の中でのご指摘だった。「頼りにするべき議員さん(安井)が、そんな事では駄目だ」といった具合だ。

それでいて、バスを3、4台連ねるような旅行では、点呼や集金等をやって仕切って下さる。その時はずっと、松下すみ代さんという方と一緒に先頭に立って下さって、お二人は名コンビだった。その後は、足立真澄ボランティアが一人で仕切って下さっていて、私は各バスごとに挨拶をし、市政報告をするだけで、楽をさせてもらっている。

足立は、私にいつも「議員が偉いと思わないで、普通の人間だと思って行動してほしい」と、ずっと注文を付けて下さった。私の後援会にも愛され、私より、足立に頼み事がされることもあるようにすらなっているほどだ。

馬場喜美世さんは政策面で、よく「こうしたらいいのに」とか「これが足らないのかも」とアドバイスを下さる。その彼女が、ここ20年くらいで地域の信望を受け、地域のリーダーとなって行かれた。それは、今まで地域のお世話を淡々と続けておられたからこそだろう。夜警の食事の用意や、だんじりの食事の用意。ある時は、仲間との飲み会やゴルフ会にもご参加頂いた。それも、会社勤めをしながらやっていらした。

そんな馬場さんの情熱は、ご自分のためでもあるだろうが、なにより「地域のため」だろう。この地域の住人で良かった、と思える地域を、住人自らが造ろうとされているのだ。

ある時、馬場さんが、だんじりの若い者を叱っているのを見かけた。皆で集めた寄付金を、無駄に使ったということだった。彼女は私に「自分のお金なら、そんな使い方をしないでしょう。皆のお金は、それ以上にもっと大切に使いなさい」と叱ったと語ってくださった。そして今は、その地区の自治会長として活躍しておられる。

もちろん、自治会長としても実力を発揮し、住民の皆さんの中心となって、地域のためにと、2017年から有志を募って毎年『御影音楽祭』というイベントを開催し、御影を「音楽のまち」にしようと頑張っておられる。昔の学生時代に、または今の職場で、仲間で、彼女と、等々 … とにかく、楽器に触れた、かじったことがある方々が集ってきて、腕自慢をする。それに、地元の小学校や中学校の生徒、保護者までが加わり、とても良い光景が見られて、素晴らしい一日となるのだ。御影公会堂が、そうした思いを繋ぐ場となっている。

音楽祭の後で馬場さんに、「ありがとう、今夜は各家庭の夕食の時、楽しい話題になると思うよ」と私がお礼を言うと、彼女は、「何をおっしゃいますやら。私は何もやっていません、皆がやってくれるのです」と流されて、おしまいになった。

私は、近々議員を引退するため、その後継に、それとなく馬場さんを誘ってみたことがある。しかし、彼女には全くその気がなさそうだったので、それ以上は押さなかった。他の自治会長からも、「馬場さんに」という声があったのだが、ご本人の気持ちが第一だから仕方がない。だが、今もって惜しい気がしてならない。

馬場さんは、私の御影に対する思いを、最も正確に捉えて下さっている。そして、私の考え方もよく理解して下さった。例えば、御影に住んで良かったと思える理由の一つに「御影公会堂に行けば、何かしら楽しい事をやっている」というのがある。だから、御影公会堂を、御影の誇りとして、クオリティーの高い、日本一の公会堂に、地域の皆で育てていきたいと願っている。

そのために、山中眼科クリニックの山中昭文院長のご提案を受けて、当局に無理を言って、スタインウェイ社のピアノをある所から借用導入して頂いた。しかし、借り物である以上、またお返しせねばならない。私は当局に「ピアノは市民の財産なので、稼働率の高い所に置くのが自然ではないか」と主張し、当局もそうですと肯定してくれたので、まず、皆さんにピアノを使ってもらう事を目標としたい。それが、御影を「音楽のまち」にする第一歩にもなると、そう信じている。同志である山中院長には、一家を上げて約束通りクラッシックコンサートを開催して頂いた。ありがたいと、心から思う。

リーフレット クリックで大きめの画像を開く
そんな折、馬場さんたちがまた、新たな企画を出して下さった。「御影公会堂の白鶴ホールで、スタインウェイ社のピアノを弾いてみませんか」と、希望者を募集し始めたのだ。そのチラシを拝見して、私は彼女たちの地域愛に心を打たれ、「必ず市長にお見せする」と誓言した。このような志の高い立派な市民がいる事を、市長に知ってもらいたかったからだ。もちろん、音楽に興味がある神戸市民の皆さんにも、一人でも多く知ってもらいたいし、ご参加いただきたい。そして、世界に名だたるスタインウェイの音色などを楽しんでいただける、良い機会になれば、と思う。

引退まで少しでも見通しをつけたいのは、他に、御影公会堂を守る事や、渦が森団地の再建。瀬戸内クルーズに、甲南医療センターのこと。神戸空港の国際ターミナルや、マイクロソフト社のラボの誘致。さらには、東灘体育館、加納治五郎ロード、台湾の故宮博物館の一部誘致と、いろいろある。どうか、残された活動に武士の情けを頂きたいと、願うばかりだ。