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2022年 12月 09日 金曜日

これから記す意見は、議長席にいて個人的に感じたことで、決して議長の公式発言ではない。そこは、何卒よろしく… ご理解いただきたいのだが、長く努めた市会の本会議の、今昔も含めた感慨を、実に強く感じている。去る12月5日・6日・7日も、本会議が続いた。神戸市会も市当局も緊張する日々だったが、議長として私もかなりの重責を担った。

支える市会事務局も大変で、議会がうまく進行するように、議長の発言順を整えたり、市議から動議や不規則発言が出たりする時の対応に備え、当局と同じように発言議員の発言通告の内容を精査し、当局の誰が答弁するかまで大凡の調査をして、議長に答弁者予想表に書き込んだりして下さる。それはもう毎回毎回、粉骨砕身の準備をして下さっているのだ。

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実は、議長が議長席に座るのは、午前中は二時間半ぐらいで、昼休憩明けに副議長と一旦交代する。その後また20分の休憩を挟んで交代し、最後まで二時間ほど議会を進行するのが慣習となっている。今期、私にとっては二度目の議長職であるが、議場の議長席に座している時間は、議長として真剣勝負の大事な場だと、改めて強く感じる。

議場では、より深く、良い議論が交わされ、二次元代表制の威力を発揮させねばならない。その為に、当局も大変な準備をしている。

しかし、稀にガックリすることもある。議員からの質問が、私から見てもっと突込んでほしいレベルのものであったり、勉強も調査も不足していて、前夜の思い付きのような質問ではないかと考えたりするのだ。

以前、私はそのような質問をした議員に、直接その旨申し上げたのだが、相手は全く意に介した風もなく、選挙で当選すればこんな楽な仕事は無い、と言いかねない様子だった。市民はもっとイメージによらず、議員の実態を知ってほしいと思う。

中には、そんな質問は本会議でなく、電話で当局の係の人に訊いた方がよく判るだろうと思われるものもある。自分の選挙区の陳情を写真入りで出された時には、私は「そんな件は、常任委員会で発言した方がいい」と思わずにいられなかった。

もちろん、議員の選出母体を大切にするのはよく理解できる。だが、最近は局地的すぎる質問が目立っているのだ。大切な本会議の時間の使い方として、もっと神戸市全体の問題とか、人口問題や経済・教育・福祉、それに、コロナ対策・空港・港など、多く問題が山積しているのだから、せめて半分ぐらいは、全体の事を考えられないだろうか。

かつての、空港反対の議員の質問などは、よく研究調査してからのものだったので、鋭敏に下準備していた当局も、逆に「勉強になった」と言ったほどだった。そんな質問ができる議員も、もう僅かになった。今は、アジテーターや、国会議員と勘違いしたり、極端に片寄ったりしている議論が多く、論客が少なくなったのではないか。

ある方などは「貴方の今回の決議は、貴方の党の方針と違うのではないか」との問いには正面から答えず、紙に書いた意見を淡々と読み上げているだけの姿勢を崩さない。これも、答弁の上手なやり方かもしれないが、私には淋しかった。

しかし、12月5日に行われた本会議は、大変良かった。

25年前に市会が『神戸空港建設に市税を投入しない』とした決議を覆し、国際化に伴って市税投入を承知する提案を、自民党の安達和彦団長が行ない、共産党の森本団長が反対の論陣を張った。これに対し、公明党の吉田謙治団長が理路整然と反論した。見事であった。この議論を聞いて大変いい経験をしたと、ある局長が言ってくれたほどで、バランス感覚と学習のたった反論は、論客と呼ぶに値する。

私も、本会議場でも常任委員会でも、議員会討議をどんどん市民の前でやればいいと思っている。例えば、26年位前まで、サンテレビには市会アワーという番組があった。各会派の議員がある程度の議論を行なっていたのだが、そのためにどの議員も、負けないよう勉強をしたものだった。できれば、市会アワーを復活してはとすら思う。

さて、本会議場で発言時間が余ると、くどくどと『雨が降ったら傘が要る』程度の、誰もが分かるような自己主張をして終わる方がいる。そういった行為は、自己PRにはなるかもしれないが、税金と、職員が多くの仕事をする、その時間の浪費になる事を知ってほしい。すべて議員の発言は保証され、議事録に残り、各局は真摯に受け止め対応に奔走する事になるのだから。

ちなみに、議長席にいて苦痛なのは、二時間半の間に尿意と睡魔に襲われた時。議員席に座っているなら、トイレに席を外す事は許されていて、特に尿意の時は、心中で「あと何分の我慢」と唱えて耐え忍ぶ。だが、歴代の中には、堪らなくなって急遽副議長に進行を代わってもらって駆け込んだ議長さんもいたそうだ。なので、私は、前日から水分を控える等の配慮をしている。

睡魔の時は、「もっと良い質問をしてくれればこちらの目も冴えるのに」と恨めしくすら思うが、とてもそんなことは言えない。仕方がないので、目薬代わりに、コップの水を紙に浸して目に入れ、眠気を払うのである。まさか、議長席で目薬は使えないだろうから…。

こうして本会議を終えるのだが、終わった後、市長や副市長がわざわざ議長室にお礼を伝えに来られることになっている。その際、市長は「議会から頂いた数々の意見や提案を、真摯に受け取り政策に活かします」と言って下さる。そうであるならば、議員もますます研鑽を積み、先見性を持ち、賢く統合力を磨いた上で、意見や提案や決議を行なわなくてはならないと感じ入るばかりだ。
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