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2022年 11月 01日 火曜日

「命を運ぶこと」を仕事とした人々の事故原因追及への情熱は、本当に大切なものだと… そう思うのは、六甲ライナーの走行不能原因が究明された、その報告を受けたからだ。

六甲ライナーのタイヤが破損し、六甲大橋上で走行不可能となり、故障車両の排除に時間がかかったために、住民の方々に多大なご迷惑をおかけしたのは、7月4日のこと。

あれから、もう三ヶ月も経ってしまったが、原因の調査を議長としてお願いしていたところ、神戸新交通株式会社の川本義仁取締役と、茨木修代表取締役、大石隆神戸市都市局副局長の三人が、完璧な調査をしてご報告くださった。

今の事故調査では、破損部品の原材料の製造時からの記録を追ったり、状況を再現した上でCT(コンピュータ断層撮影)での測定を行ったりして、状況を数値化する。時間はかかるが、そのぶん精緻に確認できる。そうして、あらゆる原因の可能性の中から、真実を突き止めて行くのだ。

今回の調査結果についての報告は、以下の通り。

  1. 走行タイヤの製造上の不具合はなく、破損した中子(パンクしても短距離の走行を可能にする、ゴムタイヤ内部にある樹脂製の円環状部品)によりタイヤ内面が傷付きプライコードを破断し、走行を継続したことで、サイドウォール及び溝底部が破れ、破損に至った。

  2. 中子の破損原因については、繰り返し着脱による中子締結部の歪みおよび車両進行方向の力と車輪中心部の遠心力が同時にかかることによる走行応力の蓄積により寸法変化が生じて結合部に隙間が発生し、空いた空間が大きくなるにつれ、車両進行方向の力と車輪中心部の遠心力による疲労が蓄積して、破断に至った。


昔、「不時着」という、航空機事故の原因を調査するサスペンス映画があったのを、思い出した。主人公の男が、戦友であった事故機の機長の操縦ミスではないことを信じて調査を重ね、最後に真相を突き止めて、二度と同じ事故が起きないようにする、といった内容だったが、こうして徹底的に事故の原因を追及して下さる事によって改善が成され、市民の安全が保たれるのだ。

三名の方は、原因の一つであった中子が樹脂製であったのをアルミ製に変えるとともに、「以後はさらに十分な点検を行います」と語られた。実は、アルミ製中子破損脱線という事故が、2019年1月16日に埼玉新都市交通伊奈線で発生していたが、原因は検査で見逃されたタイヤの摩耗だった。だから、神戸新交通の方々もあの事故をご存じで、そう言われたのだろう。まさに、十分な点検こそが、一番の安全の支えなのだ。

これで、六甲ライナーや、区間に空港を含むポートライナーに、安心して乗れる。六甲アイランドの住民の方々も、やっと枕を高くして眠れることだろう。よくやって下さったと、嬉しかった。