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2022年 08月 30日 火曜日

私は必要だと、そう考えているのは、正副議長就任時の… 挨拶回り。前にも書いたが、正副議長に就任すると、神戸市がお世話になっている主要な関係方面に、二人で挨拶回りに出る。それにあたって市会事務局も、アポイントを頂くのに大変な苦労をして下さっている。

10年前の平成23年、第93代議長を就任した時もこの行事はあったので、もっと以前から始まったのだと思うが、今のご時世だろうか、一部で『挨拶回り』の不要論が出てきている。

今回も、28カ所の関連先にご挨拶に伺って、実際に感じたことがある。勿論、いずれも快く迎え入れて下さるのだが、その対応に温度差があるのだ。特に、神戸出身の官公庁やメディアの方々は、短い面談時間の中でも、神戸への熱い思いを語って下さる。そして、私たちを車まで見送りに来て下さったりするのだから、こちらも、もう一度車から降りてお礼をしたくなるほどだ。

その一方で、立ったままで簡単にハイハイと挨拶を受けるだけで、一分ほどで退室を促される官公庁もある。人によるのか立場によるのか分からないが、そんな時は、せっかく来たのにと、つい思ってしまう。苦労して約束を取り付けて下さった市会事務局にも申し訳なく、実に寂しい。

また、ある方からは、神戸市会に対しての厳しいお叱りを頂いたりもして、帰路、副議長と二人で「本当に人によって違うなあ」と談笑した。


在京都フランス総領事館
(ja:利用者:Otraff, CC BY-SA 3.0
via Wikimedia Commons
最後の訪問先、在京都フランス総領事館を訪ねたのは、8月25日。関西領事団団長のジュール・イルマン氏にご挨拶をしに、京都へ向かった。古の都という地にあって広く、総領事館らしくないのだが、それは、この建物がアンスティチュ・フランセ関西(旧関西日仏学館)だから。一般市民も出入り自由で、中ではフランス語講座やフランス文学の学習室など、フランス文化の紹介をしていたり、フランス料理のレストランまであって、とても楽しい。

ジュール・イルマン総領事も、その主にふさわしく、実に気さくなお人柄だった。案内された丸テーブルに私たちが着席すると、総領事自ら珈琲を出して下さって、歓迎の意を溢れんばかりに表してくださったほどだ。

歓談では、神戸の様々なことが話題になった。私が、かつて宮崎市長が須磨の海岸をニースのようにしたいと言っていた事や、今や須磨は関西トップの海水浴場であり、市民が海に親しむ憩いの場になりつつある事を説明すると、総領事は「すばらしい自然と共にある神戸が、私は好きです」とお褒め下さった。「神戸の食事は美味しい」と、あるレストランの名を上げられたが、残念ながら私には分からなかった。ともあれ、本当に神戸の事をよくご存じでいらして、どちらが神戸市の人間かと思うほどだった。

楽しい時間はあっという間で、当初の20分の面談予定が一時間にもなっていたのは、今思うとちょっと申し訳ない。イルマン総領事も又、車まで私たちを見送りに出てきて、車が動き出すまで手を振って下さった。なんとも快い、いつまでも心に残る別れのシーンだった。

今、私の手元には『自由に生きたい女性のためのフランスの本』という小冊子がある。別れ際に、イルマン総領事がさりげなく渡して下さったものだ。要するに、男女平等について書かれたフランスの本を紹介するパンフレットなのだが、びっくりしたのは、セックスについての本の紹介だ。「セックスは他者同士が体で行なう最も親密な行為だから、相手の心と体に敬意を持たなくてはならない」と書かれていた。

成る程、と思うものの、こう明確に描かれると、なんだか難しく感じてしまう。だが、いかにもフランスらしい、と感じもするのは、総領事と過ごした濃厚な交流時間の影響だろうか。

「挨拶回り」が(もたら)すものは、こうした形のない財産だ。一度会って、互いに人柄に触れ、万一面談が必要な時が初対面となるのを避ける、一つの知恵のようだと、そう思えないだろうか。だからやはり、私は必要だと、そう考えるのだ。