市長は本に親しむ子どもたちを育てたいと、この開館のために議会の同意を得てと議会を気にして下さり、挨拶に立ったのは、四人。
名誉館長の竹下景子さんは「神戸のお役に立てて嬉しい」と、喜びを。安藤さんは「世界を考える子どもが、神戸から育って欲しい。私は、六歳の時に神戸に来て、本当に美しい街だと思った。この世界に通じる神戸で、本を通して、世界を思う子どもに育って欲しい」と繰り返され、建築に文化を取り入れることが大切だとも語られ、短かったがしっかり内容のあるスピーチだった。
見学すると、兵庫県立美術館のオブジェで知られる青りんごが、ここにも。これは、近代米国の詩人サミュエル・ウルマンが70代で作った「青春の詩」から安藤さんが着想を得たオブジェだ。その詩には…
「青春とは人生のある期間ではない。心のありようなのだ」と謳われている。
「希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる」
失敗を恐れることなく、困難な現実に立ち向かう挑戦心。どんな逆境にあろうとも、夢をあきらめない心の逞しさ。いつまでも輝きを失わない、永遠の青春へ ─ 目指すは甘く実った赤リンゴではない、未熟で酸っぱくとも明日への希望に満ち溢れた青りんごの精神なのだと、安藤氏は言う。そんな、彼の象徴の青りんごオブジェが、この図書館でも、書架上に飾られていた。
安藤さんは、なにか子ども心を残して育った大人のように感じられたが、それにふさわしく晴天に恵まれた、さわやかな開館式だった。