妹がか細い声で電話をかけてきたのは、12月20日の朝だ。
「お兄さん、私もうあかんね。先生は、新年を迎えようと励ましてくれるけど。痛くて、モルヒネを処方して下さるけど、効かなくなって。食事も、食べてもすぐ戻してしまうから、この二日間何も食べてなくて … でも、食べないと元気にならないと思って食べるけど、辛くて辛くて…」
と話してくれた。
「でも、お兄さんと会えたし、お姉さんとも会えたので、もう思い残すことはないし … 会うべき人には全部会えたので、よかった。あとは、娘のことをお願いします」と言い、「主人が本当にいい人で、私のことを一生懸命してくれて、ホスピスでなく自宅療養にしてくれて、ありがたい」
と繰り返す。
私には、「頑張って、まだまだいける」と元気づけることしか出来ず、あとはただ、聞くだけだった。
妹は優しく、美しく明るい女性である。私の姪との母子仲も良く、世話をよくしてくれる。姪がいなかったら、ここまできていないだろう。医師から、ガンで余命宣告を受けたのは三年前だったから、よく頑張ってくれた。いつまでも冷静さを失わず、感謝の気持ちでいる妹を誇りに思う。
その命と、一輪のハイビスカス。関係はないが、一日でも長く咲き続けて欲しい。年末の今、その後は多忙が続いているが、いつも気になっている。この気持ちが、妹の、せめてもの慰めになればと思っている。