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2021年 12月 21日 火曜日

ベランダのハイビスカスが、この寒さの中で一輪咲いてくれている。最後の力を振り絞っているのだろう。その大きな鉢を… 愚妹(ぐまい)のことで心に深い闇を抱きながら、何かしなくてはいられない気持ちで、家の中へ入れた。

妹がか細い声で電話をかけてきたのは、12月20日の朝だ。
「お兄さん、私もうあかんね。先生は、新年を迎えようと励ましてくれるけど。痛くて、モルヒネを処方して下さるけど、効かなくなって。食事も、食べてもすぐ戻してしまうから、この二日間何も食べてなくて … でも、食べないと元気にならないと思って食べるけど、辛くて辛くて…」
と話してくれた。

「でも、お兄さんと会えたし、お姉さんとも会えたので、もう思い残すことはないし … 会うべき人には全部会えたので、よかった。あとは、娘のことをお願いします」と言い、「主人が本当にいい人で、私のことを一生懸命してくれて、ホスピスでなく自宅療養にしてくれて、ありがたい」
と繰り返す。

私には、「頑張って、まだまだいける」と元気づけることしか出来ず、あとはただ、聞くだけだった。

妹は優しく、美しく明るい女性である。
写真 一輪残ったハイビスカスの花
私の姪との母子仲も良く、世話をよくしてくれる。姪がいなかったら、ここまできていないだろう。医師から、ガンで余命宣告を受けたのは三年前だったから、よく頑張ってくれた。いつまでも冷静さを失わず、感謝の気持ちでいる妹を誇りに思う。

その命と、一輪のハイビスカス。関係はないが、一日でも長く咲き続けて欲しい。年末の今、その後は多忙が続いているが、いつも気になっている。この気持ちが、妹の、せめてもの慰めになればと思っている。