▲報告書を熟読した
▲報告書の説明を受ける
殉職に至る経過では、屋内進入をまず小隊長とA隊員の2人で行われた。少し遅れて速水隊員が進入し、一人で放水を開始。初めは、空気もうっすらと白煙が漂うぐらいで、よく見渡せたとある。
しかし、わずか4分で濃煙が急激に増加し、先の小隊長とA隊員は、進入口側に少し退避した。その後1分で状況が急変し、大量の火煙となって噴出したと推定している。小隊長はA隊員と屋外に避難した(午前10時35分)。その時点で速水隊員が避難していない事に気付き、至急報を送信すると共に、速水隊員を呼び出したが、応答はなかった。そこで、小隊長は再度捜索の為進入するが発見できず、屋外に避難。行方不明、応答なしになったのは、実に侵入から5分後で、まさに悲惨である。私が現場に行ったのが10時47分。消防の幹部は、救出すべく黙々と、必死の活動を続けていた事が分かる。この時点での私、市会議員の存在はさぞかし胡散臭く、嫌な存在だったろうが、これは仕方がない。
速水力隊員は午後19時48分、分岐器(ホースを分ける機器)から東へ10mの所で空気呼吸器を着装した状態で発見されたが、午後20時50分に死亡が確認された。
この行動に対して報告書は、小隊長とA隊員は視界がクリアであったので、面体を装着しないで放水している。その後煙が増してきて、面体を着装しているが、携帯警報器のスイッチはまだ入れていなかった。速水力隊員の携帯警報器の状況は不明である。確かに面体を付け、スイッチは入れるべきであっただろうが、殉職に直結するほどのことではないと思われ、報告書もその点は指摘していない。
報告書は検証を踏まえ、今後の現場活動について「現場での消火ホース1口について2名以上とするよう配置するべき」と指摘している。また、携帯警報器のスイッチについても「スイッチを入れ30秒以内身体を動かさないと、警報音が鳴り響く事から、比較的動きが少ない消火活動では、スイッチを入れない事が多い。この点はスイッチ入を徹底させるが、機能についても検討すべき」とある。同感である。
確かに今回の小隊長は、A隊員が新人だったので、つい彼の補佐に回ったのだろう。速水力隊員はベテランだっただけに、一人で大丈夫と判断したのではないだろうか。また、スイッチを入れたか入れてなかったのかも大切だが、殉職の原因をそこに帰着してはいけないし、報告書もそうは言っていない。また、小隊長の責任にしてもいけない。彼は部下の為に、猛火の中に再進入し、死力を尽くしている。
▲仲間を捜す消防士の姿
明日は、たった5分でなぜ火煙が発生し速水力隊員が死に至ったのか、報告書から考えてみたい。