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2020年 11月 17日 火曜日

当局はよく承知しているのに、合法的だの資格があるだのといって、区別をしない。外注に当たり、その会社の実力や実績を、ほとんど… 調査していない。時間と予算が無いので、そこまでいかないのが実態ということだろうか。そう、神戸新聞が、「神戸市が発注した中央区の市営住宅の解体工事で、アスベストを見落としていた」と、11月16日朝刊で報じた件だ。

私はアスベストについて震災以来関心を持ち、これからの問題として学んで来た。

震災当時、神戸市にはアスベストについての基準も無く、東京の規準に倣って、瓦礫の撤去に注意を払っていたようだ。だが、その瓦礫の片付けは、実際には最低限度のマスクも無く水まきも無くやっていたのだ。

私は、15年~20年後に神戸市民から中皮腫患者が続出するとして本会議で対策を訴えたが、無策だった。続出こそしなかったものの、兵庫県は人口比死亡率では全国平均の倍(2014年データ)。相当数の犠牲者は、出てしまったわけだ。

以来、市も対策をしているが、市民が困まっているのは、近隣で解体が行われる時に、アスベストの有無を確認する方法を持っていない事だ。市に訴えても、調べに来てくれることもなく、業者の報告に頼る事になる。

当事者ではなく、無料で公平に調べてくれる第三者機関があればいいのだが、今回の件は神戸市も気の毒で、担当の建築住宅局住宅建設課は解体に当たり、「電機室にアスベストがありそうだ」として、鍵を壊してでも入って調べるよう業者に指示していたのに、実行されなかったようだ。幸い、県保険医協会がその点をご指摘下さり、市民の安全が守られた。

もちろん、一度吸っただけで中皮腫に罹る訳ではないが、小さな努力の積み重ねでリスクを下げなければならない。今回よくやってくださった県保険医協会にお聞きすると、市民の駆け込み寺ではないが、善意のドクターのグループで市民の健康を守るなど、いろいろと見守り、注意を払って下さっているとの事らしい。

議員の立場から言えば、発注の仕方に注意が欲しかった。解体という仕事に専門性を持たす為、政府が解体業を認可制にしたのが、二年前。業界も、解体業に自信と誇りを持つべく、色々と研修などを実施しており、今や、海外からも注目されるようになった。

かつてのように、この業界がエイヤーの時代のままではないのを胸に、アスベストについてはもとより、近隣への説明の仕方なども研究しているそうだ。今回のように指導を受けていてやらなかったら、会社の信用を毀損し、業界に迷惑をかけると思っている「解体の専門家集団」なのだ。

それでも、まだまだエイヤーの仲間がいるようで、レベルアップに苦労しているという。勿論、ゼネコンの中にも、本当に優れた解体技術と知識を持つ会社もあるが、往々にして、解体部分は下請けに出されているようだ。

今回は、県保険医協会が一石を投げて下さったお陰でなんとかなりそうだが、一番大切な市民の健康を守るための予算は、「優先されて然るべき」なのだ。

[参考リンク]
厚生労働省 都道府県別にみた中皮腫による死亡数の年次推移
独立行政法人 環境再生保全機構 「アスベスト(石綿)健康被害の救済」ページ