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2020年 06月 16日 火曜日

西宮の不動産屋が、ある広い土地を二筆に分筆して売却広告を出されたという、4月24日に書いた… 東灘区岡本のある地区で土地の分譲売却の話の続き。

私がこの地区で文教地区指定運動を起こした目的は、この地区で学び、人格を磨き、子を育む…そんな地区に人々が集まり、神戸市の誇る高級住宅地区としたいとの思いだった。皆、互いに朝夕の挨拶を交わし、しかし他人の事に干渉しないような、文教地区の住民としての誇りを持って暮らしていただくことで、憧れの地区としたいと、それで、かつて学生運動を起こしたのだった。

今回、二筆とも南側は道路幅が4mに満たないことから、その道の南北の土地所有者は、お互いにセットバックして生活の利便性と安全を確保するようになっている。ところが、今回は疑わしい点が感じられるので、「いかに合法的であっても、セットバック逃れは困ります」との意見があり、文教地区の高級住宅街であるこの地区にふさわしい町づくりのために、セットバックするよう神戸市から業者にお願いして欲しいとの声があった。地元の意見を伝えて欲しいと署名活動が行われ、百名の署名を都市局に届けたところまでが、先に書いたこと。

新型コロナウィルス禍の真っ最中だったので、当局も大変だろうと思っていたが、市から、先日業者に申し入れたとの知らせがあり、私と代表者Sさんで、その報告を聞いた。

当局は、わざわざ西宮へ足を運び、合法的である以上神戸市に強制権は無いが、よく住民の意志と神戸市の思いを伝えたところ、業者は、本件の土地購入者に向けて、その意志を重要事項の中に入れて売却するとの言質を得てくれた。市の方からも、買い主の建築される方が、その重要事項に協力して下さっているか、よく見守るつもりであると業者に伝えて下さったと、我々に報告いただいた。私は、お礼申し上げた。

業者からは、お互い様なので、道の南側、つまりSさんもセットバックするべきだと訴えられたようだが、Sさんも「もちろんの事で、すでに御近所はセットバックして下さっている」として、「こうして、私たちの住む町の利便性と安全性を確保して、文教地区に住む住民として、将来の人々に良い町づくりを残して行きたい」と語られ、嬉しかった。

ある人が、「この地区だけに贅沢をするような、特別扱いをするな!」と投書された事があった。その時、運動を応援してくれていたM紙は月曜評論で、人間の身に役割があるように、岡本のような土地も新開地のような地区もあっていいのではないかと評してくださった。以来、その評論家との交流は続いているが、未だにその論評の内容を、私は小さな誇りとしている。

「将来の人々に、良い町づくりを残す」…Sさんが語られたことこそ、その地域の資産価値を保ち、高める鍵でもある。そしてそれは、実はどの地域にでも言えることではないだろうか。

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