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2020年 04月 08日 水曜日

仕方がないが、悲しい。とり鉄最後の肉を、食べた。美味しかった。特に、うまかった。「これおまけやで!」と言って… 袋にほぉりこんでくれた切れ端の味が、心にしみた。

永く議員生活をしていると、色々な事があると思っている。昨4月7日の午後7時、安倍首相の新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発表されたが、そんな日の午前中、事務所で仕事をしていると、ある方が「とり鉄さんが、今日で終わり」と知らせて下さり、私と足立ボランティアは茫然となり、耳を疑った。

あんな繁盛していたのに…コロナウィルスの影響だろうか? 取り敢えず確かめる気持ちもあって、買いに行ってみた。

とり鉄とは美味しいかしわ屋で、御影市場を支え続けて来た … というより、東灘区のみならず、広く神戸市全域でも有名な店で、色々な人々が来店された。高嶋忠雄さんも、その一人だった。

創立者は中島鉄次さんという方で、誰よりも早く問屋に行き、良い鶏肉を仕入れて提供されていた。その伝統と意地を続けて、神戸唯一の味を守って来られたのだ。

このお店の事を良く知る、親戚筋にあたられる弓場地区協議会の西村忠博会長は、「勿体無い」と話して下さった。

私と足立が店に行くと、商品はほとんど売り切れていて、残っているもも肉を3枚頂いた。店内で働いておられた5人の方々は明るく笑顔で、来るお客様にお礼を言われていた。お客さんもまた、口々に「美味しい鶏肉をありがとう」とお礼を言っておられたが、同時に、「これからどこで買ったらいいか…」と、訴えてもおられた。

なぜ80年の歴史を閉じるのか、聞けなかった私は、心が痛んだ。後で人伝えに聞いたところでは、体調不良に加え、後継ぎが無いからのようだ。また一つ、こぶしのきいた名物小売店が消える。客をスーパーに食われていったのもあるかも知れないが、この店の人々は、皆に愛されていた。顔を見るのが楽しみで、わずかの間に交わす会話も楽しんだ。町の事、学校の事、祭りの事…それが、消えていく。鶏肉も、パック包装されたそれに変わってしまう……

皆でトリ肉を語れば、トリを飾る本命だった「とり鉄」さん、長らく本当に、ありがとう。そして、さようなら。