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2016年 10月 04日 火曜日

「テーブルに、菊正宗が置かれていた。この方は本物ですよ」。私が見ていたのと同じNHKの番組を、区役所の幹部も見ていた。「この方」とは… 筑波大学体育専門学部長の、真田 久 教授。番組中、今回のリオオリンピックでの日本柔道の活躍について、「嘉納治五郎精神が生かされた」と熱っぽく語っておられたのだ。

その幹部曰く、まさに嘉納治五郎先生は菊正宗の家系。真田教授を調べると、嘉納治五郎研究者としては第一人者と分かった。

御拝眉をと、すぐに連絡をしたのは、他でもない、約60平米を予定している、世界の嘉納治五郎記念室の監修依頼と、多方面にわたる協力のお願いのためだ。

今、工事が進んでいる御影公会堂の、約16億円をかけた大改修を活かして、東灘区、ひいては神戸市の誇る価値ある会館にするため、どう付加価値をつけ、2020年の東京オリンピックに向けて、嘉納治五郎を敬愛する世界の柔道家と教育関係者を迎えることができるか ─ 現在、そうした方々は、灘高等学校の資料室を訪ねておられる。

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私達は、地元の歴史学者であり、現在姫路獨協大学副学長の道谷 卓 教授の講演での、「御影は、世界に通じる嘉納治五郎先生の生誕の地でありながら、何の顕彰もしないのはおかしい」というご指摘に目覚めて、地元も区もやってみようということになり、高嶋良平会長がその中心になると決めた。だが、早速メディアを通じて資料を集めたものの、まだまだ不足だった。

そこに、たまたま前述のNHKの番組だった、というわけで、早速、お会いしに行くことになった。

かくて、9月29日。地元のまちづくり協議会会長に加え、東灘区役所から石神副区長と屋久課長の同行で、真田 久 筑波大学教授と講道館の東行総務部長にお会いする約束で、神戸空港に。ところが、4人と落ち合って9時15分発のSKY104便に搭乗しようという、まさに寸前。緊急連絡で、「機材不調により欠航です」と告げられた。

大勢の搭乗予定者がスカイマークのカウンターに情報を求めて殺到するのを尻目に、我々は、私の軽自動車で新幹線に乗るべく、新神戸駅に向かった。副区長と課長が切符の手配をし、我々は各方面へ連絡。弁当を買って10時05分ののぞみに飛び乗り、ようやく筑波大学への途に就いた。

14時35分に到着し、15時には筑波大へ。真田先生の研究室で待っていたが、まるで研究室そのものが、嘉納治五郎資料室のようだった。

真田先生は、15時20分に研究室に戻って来られた。笑顔の先生は、ワイシャツ姿で穏やかで、気さくな方で、思ったより小柄な普通の方だった。一目でいい方だと分かり、嬉しかった。
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高嶋会長の説明をしっかりとお聞き下さり、灘高のこともすべて知っておられた。真田先生は「この筑波大学は、嘉納治五郎先生を敬愛し、入学式も卒業式も嘉納治五郎像の前で行います。先生は偉大な教育者であり、国際人です。今でも、世界各地で先生に関するシンポジウムが行われています。今度、生誕の地 御影としてやって下さるのは、いいことですね。お手伝いをしましょう」とさらりとおっしゃって、沢山の資料を頂いた。

今回来た4人の仲間と、真田先生のご案内で緑豊かな筑波大学のキャンパスを歩きながら、私は、御影公会堂の嘉納治五郎室を価値あるものにしたい、と念じた。残念ながら、時間切れで講道館を訪れるのは後日として、帰宅したのは夜の22時30分。それでも、実りに疲れはなく、実に充実した一日だった。
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