それは、沖縄と石垣島への、7月13日から16日にかけての旅でのこと。大切な仲間の一人が、沖縄の一等地にホテルを建設。神戸から沖縄へ転出するので、仲間約20人でお祝いに、改装中のホテルを訪問することになった。ついでに石垣島にも行こうと、予定を立てていたのだ。
ところが、旅行中15日深夜2時頃から、尿が出なくなった。強い尿意が襲ってくるのに、出ない。苦しい局部をさすりながら、部屋の中を約3時間歩き回ったが、出ない。遂に朝5時、タクシーで那覇の救急センターに行った。足立ボランティアが付き添ってくれていて、本当に助かった。
若いドクターは、苦しむ私を見て暫く待ってから「初めてですか」と聞かれた。私は「ハイ、助けて下さい」と答えた。ドクターが局部を握って管を差し込むと、一気に760ccの尿が噴出した。
私は、救急センターの重要性が本当に分かった。ドクターに「旅を続けても良いですか」と聞くと。「OKだ」と仰る。それを聞いて、安心して石垣島に行った。スクーバダイビングを楽しみ、幻の島へも行って海の美しさを満喫した。が、昼の3時頃から、下の方が少しおかしいと感じだした。
▲ 待てどくらせど診てもらえず
見るにみかねた足立が「他の病院を紹介して下さい」と言うと、徳洲会病院があるという。それを聞いて、とにもかくにもと、タクシーで徳洲会病院へ。受付でお願いすると、4人待ちだという。「本当に苦しいので、救急でお願いできませんか」と尋ねても、若い受付嬢は「順番です」とにべもない。
だが、横の男性の受付が見かねて「尿が出なくて、苦しんでいる」と医師に連絡をとってくれた。お陰で、待っている患者さんに事情を説明した上でだが、先に受診させてもらえた。また管を入れて、今度は700ccが出た。結局、管を入れたまま、小便袋をぶら下げて旅を続けることになった。
神戸に帰ると、かかりつけの医師は、休みにもかかわらず処置して下さった。この経験から改めて学んだのが、人の親切・優しさだ。受付の人は、当たり前で正しいことをしているのだが、徳洲会の若い受付の方が医師に相談してくれなかったら、私はどうなっていただろう。
石垣島での病院からの帰路、タクシーの運転手さんに話すと、「徳洲会は親切ですよ」と言う。運転手さんは大の野球好きで、野村克也選手が南海ホークスのテスト生として受けた体格試験で、基準より1cm足りなかった話しをしてくれた。検査の人が「丁度にしときます」と言って合格させてくれたのだという。野村選手は、「あの時の少しの思いやりがなければ、今の私はなかった」と講演で語られたそうだ。「人は、その時に応じて情けが必要なのだということを教わった」というその話しが、体験から良くよく身に染みた、痛い旅だった。