Skip to main content.

2016年 06月 21日 火曜日

今まで、「法は法だ」として来た行政マンも、間違ってはいない。しかし一方で、法を見直すのもまた、正しい。それは… 国の安全保障などという大仰な見直しの話ではなく、100人の高齢者が暮らすマンションのことだ。

東灘区の岡本に、今も美しく管理状況も良い、昭和53年築の高級マンションがある。ところが、エレベーターは2階からで、1階から2階の間は、屋外の大きなテラス状の階段になっている。そこに53世帯、約100人が仲良く生活されているのだが、平均年齢は70才近く、時々、階段の途中で一休み。

住民が滑って骨折し、救急車で運ばれるということも、幾度かあった。救急隊員の方がストレッチャーを使うのも、大変。特に、雨の日は危険だった。住民の皆さんは、1階までのエレベーターの連結を決め、お金も貯めて来た。ところが、そこに法律が「まった」をかけた。容積率が不足していたのだ。それも、わずか10m²程。

この件で特に気の毒なのは、もともと200%だった容積率が、1988(昭和63)年に容積率が150%に改まり、既存不適格になってしまったこと。住民には、なんの罪もない。相談を受けたY設計事務所も、全力を尽くして工夫してみたり、計算をし直してもみたのだが、神戸市は頑として「OK」と言わなかった。

そこで、私に相談があった。私も市に当たってみたが、市は「設計士と話しをする」とだけ。結局、この状況を打破するには、隣地をわずかだが買収するか、永久借地するしかなかった。幸い、隣地が神戸市水道局の用地だったので、お願いしてみた。水道局は本当によくやって下さったが、様々な理由から、売買も借地も出来なかった。局長は最後に、当該マンションがかつて市に提供した公園と、水道局の土地を交換して売却しようとのご提案まで下さった。私は感動したし、手を合わせた。だが、それでもダメだった。

このマンションの住民は、永らく税金を払い、社会に貢献してこられているのに、いつの間にか既存不適格の住居に暮らし、日々の生活が困難になってしまった。こんなことに知恵と工夫を示さない市の行政は、市長が口にしている「親切で住みよい神戸市」ではない。私は、「違法を押し通せと言っているのではない。この状況を打破するために、法を見直し、合法的に解決して欲しい」と強くお願いした。

これに対し、関連局も全力をつくした結果、合法的に解決出来る方法が見えた。私が報告申し上げると、ご相談下さった方 … 理事長や管理人の方など、それぞれ温厚で立派な方々が、喜んで下さった。皆さん「死ぬまで苦労すると思っていたが、お年寄りが助かる」と安堵され、管理人の方は「住民の方々から、まだできませんか? と聞かれていたが、特に雨の日が辛かったので、喜ばれる」と仰ってくださった。

これでこそ、行政の温かみが伝わってくるというものだ。法は、建設的に改善するためにあるのである。